十一さんの映画レビュー・感想・評価

十一

十一

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リバー・ランズ・スルー・イット(1992年製作の映画)

4.1

神と愛の関係を、釣りという悠久の大自然を相手にした営みで示してみせる。透き通るようなブラピの美しさをもって、最も神を理解し、愛すべき存在こそ、逆説的にその純粋さが破滅と苦しみを刻むのだという真理を、撮>>続きを読む

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

3.9

差別の構造について、黒人社会の内と外はもちろん、内部にある貧富の差、よりマイナーな差別意識までも階層化し、作家という語り手の特権性を駆使することで、コメディとして俯瞰を提示する。現代のセンシティブな差>>続きを読む

フォレスト・ガンプ/一期一会(1994年製作の映画)

4.4

何度目かの再見。高校生で初めて観た時はフォレストの物語として観ていたので、イノセンスが救いをもたらす構図に嘘臭さを感じていたが、ジェニーやダン、母親といった、フォレストを取り巻く人々の物語として観られ>>続きを読む

かがみの孤城(2022年製作の映画)

3.6

辻村深月の原作は作中の主人公らより、少し大きめの世代をターゲットとしている印象があるが、原恵一の映画化により、児童文学としての側面がより強く取り出されていて、従来の読者層にない少年少女に届く映像作品と>>続きを読む

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)

3.5

偏見と偏食のアナロジー。それがなんであれ、主義者という立場の危険性を痛烈な皮肉を投げつける。ヴィーガンという考え方そのものへの嘲笑ではなく、ヴィーガンを隠れ蓑にした差別意識を炙り出す構造になっている。>>続きを読む

ドライビング Miss デイジー(1989年製作の映画)

3.9

再見。最初に観たのは中学生ぐらい。歳をとって見直してみても、作品への解像度は上がったが、印象が変わらないのは、自分がまだ歳を重ねきっていないせいなのか。老齢に達してからの人生の長さというものを、この映>>続きを読む

大脱走(1963年製作の映画)

4.0

再見。緊張と緩和、エンタメとしての完成度が高い。命懸けの作戦のはずが、どこか牧歌的でありながら、唐突な終焉を迎えるラストのリアリティは戦争の記憶がまだ鮮明な時代であることを知らせている。

オズ(1985年製作の映画)

5.0

再見。ジョディを観た後だと、オズでの出来事を語ったために、精神病院に送られるドロシーの姿が重なる。ファンタジーの世界はつらい現実を生き抜くための処方だとしても、もはや、それを口に出すことはみだりがまし>>続きを読む

ナポレオン(2023年製作の映画)

4.1

歴史物ではあるが、最新のエイリアンシリーズにも通じる世界観。種としての人類の生態を神の視点で俯瞰すると、世界を動かしてきたのは、思想や理想などの理性的な力では到底なく、生殖のためのパワーゲームの結果に>>続きを読む

バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3(1990年製作の映画)

4.3

再見。2と3は同時期に作られたらしいが、テーマが連続しているのはそのためか。

バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2(1989年製作の映画)

4.2

再見。ジョーズではないがサメ映画は山ほど作られているし、ここで予言された未来が当たっているものもある。

バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985年製作の映画)

4.8

再見。完成された完璧な脚本。SFにおいて御法度とされる過去の改変をポジティブなやり直しとして肯定的に描き切るのは、現代日本のなろう系小説に近いメンタルかもしれない。

ジュディ 虹の彼方に(2019年製作の映画)

3.7

特殊な才能をもった1人の人間、女性、母親としての、ジョディ・ガーランド個人の物語としてみるなら、密度高く描かれ引き込まれる部分もあるが、社会派の文脈で見るなら、資本サイドへの忖度が大き過ぎて、ショービ>>続きを読む

グリッドマン ユニバース(2023年製作の映画)

3.7

ウルトラマンを原体験とした庵野監督が、子供部屋的な世界との訣別を描いたエヴァの磁力の下、ウルトラマンの遺伝子を引き継ぐグリッドマンという虚構を支えとし、日々の生活を生き抜く力について描く循環構造が、ま>>続きを読む

ショーシャンクの空に(1994年製作の映画)

4.4

再見。完璧な構成を持つ映画の一本。困難な時にこそ、何者にも侵されない内的世界を持ち続けることの重要さが描かれる。聖書も言葉に過ぎず、映画女優も手の触れられないフィクションでしかない。それでも、その裏に>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.6

ゴジラ上陸後のVFXが素晴らしい。ハリウッド版を見た後だと、ボリュームとして見劣りするのは予算面で仕方ないところを、いたずらにシーンを増やさず、リソースを必要な見せ場に集中させた判断は見事。

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

4.1

長いが、邪悪の凡庸さを描くには必要な尺ではある。邪悪が為されることに明確な悪意はなく、ただひたすらにありきたりのエゴイズムが積み重なっていく。歴史の厚みと過ちというのは、詰まるところ、その瞬間において>>続きを読む

キリエのうた(2023年製作の映画)

4.0

90年代から少女を描いてきた岩井俊二ならではの葛藤が本作でも見て取れる。不可侵な神聖としての少女と欲望の対象としての少女。美しいものを手に入れたいが、手に入れることでその美は失われる。その矛盾した欲望>>続きを読む

イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)

3.8

マイボディガードの頃を思えば、ダコタファニングの成長が感慨深い。3作目で下手にボリュームを増やして薄味になることなく、あっさりと相手を片付けていく死神マッコールが頼もしい。演出的にホラー映画の殺人鬼と>>続きを読む

バリー・シール/アメリカをはめた男(2016年製作の映画)

3.6

トムクルーズの使い方が巧い。バリーシールという男の虚々実々を表すのにこれ以上の配役はない。外面の良さと強さの裏にある胡散臭さ、それでいて、ある種の純粋さとイノセンスが漂う彼の存在は、アメリカの夢が幻滅>>続きを読む

イングロリアス・バスターズ(2009年製作の映画)

3.9

再見。映画の政治利用が徹底的に自己言及されるメタ構造。戦争の英雄を祭り上げるプロパガンダとしてナチスは映画を利用するし、その復讐に女が選んだのも映画によるテロである。さらに、タランティーノが本作を通じ>>続きを読む

ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023年製作の映画)

3.8

くどいぐらいのアクションシーンの連続。単調にならないよう、あらゆる工夫が凝らされているが、それでもくどい。とは言え、表層に見える暗殺者ギルドの組織の設定の面白さや、複数勢力が争うストーリーではなく、こ>>続きを読む

ドラキュラ/デメテル号最期の航海(2023年製作の映画)

3.5

懐かしさすら覚えるゴシックホラーの伝統的なガジェット群。ディテールがどこまでも解剖学的に突き詰められているのはこの監督の持ち味か。世界観の詳細で物語るなら、ドラキュラ自身のキャラクタは不要で、ほとんど>>続きを読む

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

3.9

トムクルーズという伝説が、イーサンのキャラクタと重なる。AIの反乱という今日的なモチーフを取り込んではいるが、スパイ映画のエージェント自体、ヒーロー像として語られ尽くし、消滅しようとしている絶滅危惧種>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.5

冥界下りの構造はいつもの宮崎作品だが、さらに今回はセルフオマージュが散りばめられている。どこかで見た過去作の記憶へのアクセスは、異星から飛来した隕石がもたらした奇跡を振り返る旅に重なる。想像力の源泉は>>続きを読む

人狼 JIN-ROH(1999年製作の映画)

4.1

再見。最初に見た時も結末が気に入らなかったが、見直しても、やはり、気に入らない。女が行こうと言ってくれているのに、その先に向かうことができない男に苛立ちを覚える。
ただ、ある程度自分自身が歳をとってみ
>>続きを読む

インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国(2008年製作の映画)

3.4

再見。前作から20年近く経ってのシリーズを復活させる意味がなんだったのかと、最初に見た時は思ったが、宇宙人が残した古代文明、密林の奥の遺跡、エリア51の秘密に、宇宙人とオーパーツ、人喰いアリなど、過去>>続きを読む

サイダーハウス・ルール(1999年製作の映画)

4.5

再見。ジョン・アーヴィング自身が脚本も手掛けているだけあり、話の構成と脚本の解釈が完璧。配役も音楽も撮影も、全て、この完璧な物語を語るためのパーツとして、これしかないという精度で噛み合った、奇跡のよう>>続きを読む

BLUE GIANT(2023年製作の映画)

4.0

3Dの粗さや、素人ドラマーがそこまでついていけるものなのかと、設定の漫画的な飛躍はあれど、音楽が画面を成立させると信じた演出と、それに完全に応える演奏が素晴らしい。作品全体でジャズを信じているのだと、>>続きを読む

ワイルドカード(2014年製作の映画)

3.1

イコライザーもそうだが、ガンアクションを廃して立ち回りを徒手空拳に限定することで、アクションを際立たせるスタイルはセガールより前にどんなものがあったか。

フィールド・オブ・ドリームス(1989年製作の映画)

4.0

再見。野球というスポーツがアメリカ社会に占める独特の位置をよく掬い上げている。果たされなかった夢の行き場を具現化した表現として、これ以上の設定はないのではないか。自分がもう夢には届かないと知った時、ト>>続きを読む

陰陽師 II(2003年製作の映画)

3.0

やはり、真田広之がいないと物足りない。野村萬斎の舞も実際に見ると違うのだろうが、スクリーンで見ると味気ない。

陰陽師 〜おんみょうじ〜(2001年製作の映画)

3.2

再見。ハリウッドのファンタジー映画に求めるような視覚的な驚きは、ほとんどないが、舞台演劇の見立てを約束事として受け入れる邦画ファンタジーの文脈からすれば、野村萬斎の晴明役に真田広之をぶつけるというキャ>>続きを読む

里見八犬伝(1983年製作の映画)

3.5

再見。予算がかかっているのは、豪華なキャスト、煌びやかな衣装甲冑と、舞台じみたセットの端々から感じられるし、ショットも迫力があるが、原作の構成要素である、前世の繋がりや転生の設定を、当時のスピリチュア>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.4

人が仲違いをする理由は多くあるが、退屈であるという理由ほど残酷でやりきれないものがあるだろうか。善良であろうと努めることはできても、教養を備え、人生を実りあるものにするような話題を提供することは、難し>>続きを読む

オールド(2021年製作の映画)

4.0

なまじエンタメが巧いので、ライト層からの期待が大きいのだろうが、惚れ惚れするぐらい、ブレないいつものシャラマン節。時間とフィルムの関係は他の監督も扱ってきた普遍的なテーマだが、シャマランの関心はそこに>>続きを読む