ゆきさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

ゆき

ゆき

映画(1976)
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午前4時にパリの夜は明ける(2022年製作の映画)

3.8

生活

喪失から始まる物語。
起伏よりも安定を求めていく展開。
子供がいて当たり前の環境が長い主人公と居場所なんて無いに等しかった少女の出会いが鍵になる。
詳細を語らずとも見え隠れする絶望という節目。
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聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

3.9

狂信

神のみぞ知る、この町のその後。
女性ジャーナリストに焦点を当てつつも、信仰が生む歪みも影に潜ませながら終始不穏さを漂わせる118分。
実在の殺人鬼をモデルとしたこの物語は、町の男性の誰もが犯人
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AIR/エア(2023年製作の映画)

4.2

Just do it

まさにアメリカンドリーム。大仕事の行く末を見守る112分。
「ただの靴」をビッグネームに選んでもらうための駆け引きにハラハラして、ユーモアあふれる人間模様にクスクス笑えて、大満
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ザ・ホエール(2022年製作の映画)

3.9

救い

室内のみのワンシチュエーション。
“死”というリミットまでの数日間。抗うわけでもなく愛した事実と向き合う。
喪失の果てで止められなかった過食、その結果の醜態。
姿を見られることへの抵抗感がひし
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シャドウプレイ 完全版(2018年製作の映画)

3.8

一张游戏一场梦

2019年にフィルメックスで鑑賞してから、ついに完全版。
やはり美ノアールでした。
スピード感と愛憎の入り混じり方、画で見せつけてくるこだわりの強さ。演出の妙だ。
土地開発という夢の
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夢の裏側 ドキュメンタリー・オン・シャドウプレイ(2019年製作の映画)

3.8

裏側

フィクションが世に届くまで。
作家性を保つため、夢見た完全なる一作の完成を追求していく。
検閲という壁や芸術へのこだわりと現実の狭間。たくさん言葉を交わしながら制作チームも演者も本気でぶつかっ
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アダマン号に乗って(2022年製作の映画)

3.8

奇跡

精神医療についてのイメージが少し変わる一作でした。
現代ドキュメンタリーの巨匠が紡ぐ優しい世界。
デイケアセンターの仕組みとして、これが通常ではないことはわかっていても理想像としてずっと続いて
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エゴイスト(2023年製作の映画)

4.1

偉大なる母

出会っちゃったんだものしょうがない。
友人との定例会の様子から始まる物語。感覚的に惹かれあって恋仲になった人と関係が濃くなるほど、友人たちとの話題は変化する。
洋服とガム。TPOに合わせ
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ぜんぶ、ボクのせい(2022年製作の映画)

3.7

視線

見つめる先が希望なのか願望なのか。
しんどい環境の人たちが寄り合う時間を見た。
子供ながら苦渋の選択をした主人公。関わる人次第で価値観が大きく左右される繊細な年代に濃ゆい経験を積んでいく展開。
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Winny(2023年製作の映画)

3.9



「世の中を良くするため」と語る天才に降りかかった惨劇と組織の中の醜態。二つの闘いを見た。
「杭は一人では打てない」と水面下で手を組みながら工作されていくアンフェアな刑事司法。何かを“悪”として矢
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なのに、千輝くんが甘すぎる。(2023年製作の映画)

3.5

上書き完了

「地味」という単語が似合わなすぎるヒロイン。彼女の慌ただしい感情を見守った98分。
意地悪も邪魔もない、間接的な悪意だけ。「片思い業界」というすごく優しい世界線だった。
キャラクターが掴
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KAPPEI カッペイ(2022年製作の映画)

3.6



ずっとギャグ漫画、でもピュアラブ。
やりすぎてるくらいのお馬鹿さを本気で見せつけてくる一作でした。
濃ゆーいふざけたキャスティング(褒めてます)、絶妙に全部ダサいのが最高に良い。でもバトルシーン
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HOMESTAY(2022年製作の映画)

3.8

死んだつもりで生きてみる

ユーモアと人の陰りがいい塩梅に混在している感じ。
タイでの実写化「ホームステイ ボクと僕の100日間」も好きだったけど、日本の実写版もなかなか好みでした。
瀬田監督が映す演
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茶飲友達(2022年製作の映画)

4.1

family

「性欲は生きる欲」。
最期を意識しながら生活する世代が選ぶのは煎茶ではなくて玉露。
希望を満たすか、何かに依存するかで日々を奮い立たせている人たちを見た。
高齢者の現実問題だけではなく
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ロストケア(2023年製作の映画)

4.0

家族の呪縛

殺人か救いか。1人の男性が行為に至るまでを追う、他人事とは言えない114分。
顔のアップが多いけれど、気にならないほど演者さんの熱量が素晴らしかった。
ガラスに写し込む表情や差し込む光の
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せかいのおきく(2023年製作の映画)

3.8

くそみそ

笑うところだぞ?と小粋な会話や表情でツボをくすぐってくる90分。
序章から始まり、3人の若者を軸にした江戸の日常を切り取る。どんなものも最後まで使い尽くすのが暮らしの術である。
汚穢屋(お
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The Son/息子(2022年製作の映画)

4.1

Life goes on.

引き金が何か、息子も自分自身も見失っていく男性の行方を見た。
離れて暮らす17歳の息子の異変。完璧な父親像を抱いていたピーターの希望通りには回復しない息子。
上手くいかな
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いつかの君にもわかること(2020年製作の映画)

4.2

No.1 DAD

父・ジョンと息子・マイケル、一緒に歩くシーンの対比がとても印象的だった。
マイケルの意思も見え隠れする中で、ジョンの人生最大で最期の決断の行方を追う一作。
会話量は少ない。これを地
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オットーという男(2022年製作の映画)

3.9

ビックハート

「彼女しかいない」と心のうちを素直に明かせるOTTOさん。
妻亡き現実に失望し、自殺願望ばかり募る。
頑固でも不器用でも、気にかけてくれる存在を見逃すのは、実にもったいない。
友人とい
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ちひろさん(2023年製作の映画)

4.0

同じ星

分け隔てなく食べさせて、平等に期待しない。ちひろさん。
緩急はほぼない。131分ずっと、心地いい会話が続く。
笑っていてもどこか虚無感のあるちひろさんの表情と言葉のチョイスが好きだった。
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浜の朝日の嘘つきどもと(2021年製作の映画)

3.7



大久保さんの渋みがツボにはまる一作でした。
女同士のちょっとした下品な会話も口の悪さもご愛敬。
「不要不急」の一部にされた劇場での映画鑑賞。
文化が終焉の危機にさらされたバックグラウンドもセリフ
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銀平町シネマブルース(2022年製作の映画)

3.8

幸せ

ほんわか映画愛で溢れる99分だった。
想像以上にコミカル。小気味いいリズムで人情物語が展開される。
登場するキャラクターがいちいち濃い。笑
すぐ泣く梶原さんと少年の淡い恋が好きだった。怪しすぎ
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ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)

3.9

同族

孤独を軸にした純愛物語だった。
「喰べる」という衝動により愛情を表に出せる少女。同じ秘密を抱える者たちは匂いで引き寄せ合う。
必要のない捕食を楽しむ者もいた。各々の方法で人生を拓いていく。
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すべてうまくいきますように(2021年製作の映画)

4.0

すべて順調

延ばされた命ではなく、自分で生きるということ。
それも豊かさが成し得る選択肢なんだなと痛感した。尊厳って平等ではない。
娘が小さい頃の記憶を回想しながら、母親との確執も垣間見える展開。
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戦場のメリークリスマス 4K 修復版(1983年製作の映画)

3.9

正しさ

男性だらけ、かつ他業種の表現者が集う作品。
大島渚作品が国立機関に収められるとのことなので、4K版を劇場で。
学生の頃、印象的だったシーンの数々も、歳を重ねてみると少し違う捉え方になってた。
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音の行方(2022年製作の映画)

3.7

鼓動

「形にする」という概念に囚われていることに気付かされた一作。
感覚的な表現に疑いを持たない人達を羨ましく思う。
音楽という共通言語の中で、対応力が求められる場所。最近頻出する「多様性」という言
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スープとイデオロギー(2021年製作の映画)

4.0

理由

「忘れる」ということも必要な時がくるのかもしれない。
帰国事業という過去の幻。息子と孫たちの幸せを願い続けるゆえに続ける仕送り。それでも現実に金銭的な問題は迫り、老いは待っていてくれない。
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チョコレートな人々(2022年製作の映画)

4.0

もがく

細分化した作業をできる人が担当して、凸凹を互いに埋め合わせる作業工程。
特性を生かした排除しない職場環境で、トライアンドエラーを繰り返しながら居場所を拡大していく夏目さん。
過去の過ち・失敗
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彼女の人生は間違いじゃない(2017年製作の映画)

3.7

迷い

処女作の小説を原作に、自ら映画化した監督。
人生の打開策を探す人たちを描きながらも、哀しみだけではない。キャスティングの妙につきる一作だった。
恋人からの期待も父親の逃避も大きなプレッシャー。
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裏アカ(2020年製作の映画)

3.2

意義

瀧内公美さんの演じ抜く強さが好きだ。
空しい物語。101分、何もつかめない大人たちの抗いを見る。
本当の自分を他人に見せることが真理とは思えない。
物語の終わりが違えば結構好きだったかも。
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犬も食わねどチャーリーは笑う(2022年製作の映画)

3.5

他人

夫婦というシステムの中で円満に至るには。
上手くいっているように外に見せつける人ほど、どこかに吐きだしているんだろうなと思ってしまった。正直切ない。笑
平行線の会話が続き、過去に浸る夫にうんざ
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イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.0

おあいこ

終わらせられないものに憑かれた人たち。
後戻りができない一言の行く末を見た。
「ずっとお前の話、つまらないと思ってた。」と言い捨てたが無視する方も疲れるもの。どちらもしんどくて、究極の言動
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ベルファスト(2021年製作の映画)

4.1

チキ・チキ・バン・バン

大人の事情を子供の目線から見上げる感覚の98分。
表情豊かで実直な母親と知恵を教えてくれる祖母。ロマンチストな祖父と強い父、そして優しい兄。家族の記録だった。
北アイルランド
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ブギーナイツ(1997年製作の映画)

3.9

偽家族

最大の取り柄を活かす天職。しかし快楽に依存しすぎるリスクは大きい。
曲のかかるタイミングとチョイスがすごく好みだった。
成功を目指し続けた輝かしい時代と移行する流行に翻弄される155分。
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とべない風船(2022年製作の映画)

3.8

最善の別れ方

誰にも非のない惨劇。予期せぬ転落。それぞれに回復する様を見た。
「さよならさえ言えなかった」という悔悟の情が刺さる。
人生の着地点として選ぶならどこだろう。
島、という限られたコミュニ
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マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

3.5

供養

浮世離れしたような85分。勢いのまま動きだした物語でも後腐れない感じの余韻は良かった。
どうして永野芽郁ちゃんの起用に至ったんだろう。無意識にイメージを凝り固めてしまってるんだなあ、と反省。
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