love1109さんの映画レビュー・感想・評価

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658km、陽子の旅(2023年製作の映画)

3.8

人生は出会いの連続だ。良い出会いも、悪い出会いも、それが例え一瞬であったとしても、すべてはやがて、その人の人生の物語の一部となる。世界から孤立し、引きこもっていた42歳の陽子が、人と出会うことで痛みと>>続きを読む

水は海に向かって流れる(2023年製作の映画)

3.7

人間は誰だってズルくて弱い。薄汚くドロドロした負の感情だって誰にでもある。そんな誰にも見せられないような鬱屈した感情を、そっと共有して、共感して、それでいて、お互いに嫌じゃない。むしろ、なんだか愛おし>>続きを読む

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)

4.2

冒頭。花畑を二人の少年が疾走するシーン。それだけでこの映画が、まぎれもない傑作であることがわかる。子供でもなければ大人でもない。思春期ならではの喪失。置き所のない身体と、やり場のない感情が、思いがけな>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.2

大人になるとわかる。あの頃、終わりがあると微塵も感じなかった、たわいもない時間が、いかにかけがえのない大切な時間であったかということを。また、たとえ親であったとしても、自分と同じように、悩み、迷い、も>>続きを読む

男はつらいよ 旅と女と寅次郎(1983年製作の映画)

3.8

寅さんの美学は「引き際」に表われる。誰よりも我儘で、往生際が悪いようにみえて、居てほしいときにすっと姿を消してしまう。そこに、自分ではなく、相手を慮るやさしさがある。慮る。このもはや死語になりつつある>>続きを読む

波紋(2023年製作の映画)

3.9

この映画について、荻上監督は「私は、この国で女であるということが、息苦しくてたまらない」という言葉を寄せている。この社会に渦巻いている不安や苦しみは、得体の知れないもの、例えば、新興宗教にすがりつかね>>続きを読む

逃げきれた夢(2023年製作の映画)

3.9

ちゃんと生きるって難しい。やり過ごそうとしても、そうは問屋がおろさない。人は人として人と向き合わねばならず、人生のどこかで、その時は必ずやってくる。当たり障りのない言葉、その場限りのやさしさ。唯一、か>>続きを読む

渇水(2023年製作の映画)

3.8

停水執行。すなわち、水道を止めるという行為は、例えルールであったとしても、少なからず命を危険にさらす行為だ。それがネグレクト(育児放棄)を受けている子供の家庭であった場合、より一層、事態は深刻となって>>続きを読む

千夜、一夜(2022年製作の映画)

3.7

年間で約8万人。警察に届けられる行方不明者の数は、そのまま、大切な人、愛する人が、ある日、忽然と目の前から姿を消してしまう数でもある。理由のわからない、そうした喪失と、人はどのように向き合い、時を過ご>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

3.8

ゴダールやヴェンダース、カウリスマキ、あるいは、小津のように、ウェス・アンダーソンの映画には、すでに確固たる「スタイル」が確立されている。私たちは、その色彩、その構図、その物語、その世界にただ身を委ね>>続きを読む

小さき麦の花(2022年製作の映画)

4.1

ほんとうにカッコいい男の条件とは何か。余計なことを語らず、寡黙で、なによりも優しい。相手のことを思いやり、慮ってくれる。中国西北地方の農村で、お互いを慈しみ、慎ましく生きる。どんなに辛く、苦しくても、>>続きを読む

銀河鉄道の父(2023年製作の映画)

3.8

どんな人間も父と母がいなければ存在しない。命が与えられ、受け継がれるものであるならば、その命によって綴られた言葉、描かれた絵画、奏でられた音楽、それらの創作物もまた、ある意味、与えられ、受け継がれたも>>続きを読む

Winny(2023年製作の映画)

4.0

日本は「新しいもの」に不寛容な国だ。新しい技術、新しい観念、新しい価値観への疑念や恐れのようなものが、この国全体に蔓延っている。あらゆる分野で遅れをとっているにも関わらず、なお変わろうとしない状況は慢>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.2

いい映画を観るとずっと泣きたい気持ちになる。何気ない会話、何気ない仕草、そこから人の気持ちが痛いほど伝わってくるからだ。人はそれぞれに、ままならない人生を、それでも諦めず、必死にもがきながら進んでいる>>続きを読む

男はつらいよ 花も嵐も寅次郎(1982年製作の映画)

3.8

寅さんはお節介で、ここぞ、というときに弱い。お節介はやさしさの表われで、弱さは照れの裏返しだ。結局のところ、人間は、義理と人情なのだと断言できる。当時、絶大な人気を誇っていたであろう、二枚目スター・沢>>続きを読む

湯道(2023年製作の映画)

3.5

茶道、華道、書道。日本人が「道」とするものには、その対象物への限りない尊敬の念と愛がある。映画を企画し、脚本を書いた、湯道初代家元の小山薫堂によると、感謝の念を抱く、慮る心を培う、自己を磨くというのが>>続きを読む

男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(1982年製作の映画)

3.8

太地喜和子、大原麗子、松坂慶子と、歴代のマドンナたちもさることながら、いしだあゆみの艶っぽさたるや。寅さんを観ていると、昭和にあって、令和にないものがいろいろとみえてくる。いかにも大スターという雰囲気>>続きを読む

男はつらいよ 寅次郎紙風船(1981年製作の映画)

3.7

寅さん28作目。寅さんのカッコ良さは、人の哀しみや寂しさに、そっと寄り添うところにある。人情に厚く、人の心の機微に敏感で、放っておけないところが「らしい」のだ。それにしても、岸本加世子が演じたフーテン>>続きを読む

RIZE ライズ(2005年製作の映画)

3.8

KRUMPというダンスがとりわけ胸を打つのは、全米で最も犯罪率が高かったロサンゼルスのサウスセントラルで、それが楽しむためではなく、やり場のない怒りや不安、葛藤を表現する手段として生まれたところに由来>>続きを読む

ザ・ホエール(2022年製作の映画)

4.1

人はいつか死ぬ。人生を終えようとするとき、あるいは、最期を自覚したときに、何が脳裏に浮かんで、誰に何を伝えたい、伝えようと思うだろうか。人生で最も大事なこと、価値のあることは、とてもシンプルなこと。人>>続きを読む

The Son/息子(2022年製作の映画)

3.7

例え親子であったとしても本人の苦しみはその本人にしかわからない。助けを求める息子と、その求めに応えようとする父親がいても、愛だけでは救えないこともある。むしろ、その愛こそが、人を傷つけ、苦しめる要因で>>続きを読む

赦し(2022年製作の映画)

3.8

どうしても赦せないことが1つだけある。やがて時間が流れ、致し方ないことだと頭ではわかっていても、水に流すことができない。それは、人間は理性ではなく、感情の生き物であるからだ。赦せないというのは苦しい。>>続きを読む

夜明けまでバス停で(2022年製作の映画)

3.8

大声だけを拾うマスコミ。メディアが死んだこの国で、唯一、良心的な映画だけが、声なき声に耳を傾け、小さき声を代弁してくれる。コロナによって疎外され、社会から断絶されたのは、か弱い市井の人たちであり、そん>>続きを読む

スクロール(2023年製作の映画)

3.7

何も考えず、ただただ楽しく生きていければいいけど、人生はそんなに甘くない。人は人に影響を与え、与えられることで、やがて、何者かにならねばならない。嗚呼、今の若者は、生きること、愛することについて、こん>>続きを読む

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

4.0

ヨーロッパはれっきとした階級社会だ。進学できる学校はおろか、言葉にも違いがあることを、私たち日本人は、どのくらいリアルに想像できるだろう。そんな封建的な階級格差、パワーバランスのまやかしやインチキを、>>続きを読む

エゴイスト(2023年製作の映画)

4.1

ゲイについて描いてはいるけど、決して遠い話ではなく、とても身につまされる映画だった。それは愛についてのエゴ、大袈裟に言ってしまえば、人間の孤独を描きながら、それでも、誰かとつながろうとする映画だったか>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

3.6

芸術が狂気を呼び覚ますのか、狂気が芸術を呼び覚ますのか、それはわからない。芸術が、人間をそれ以上の存在たらしめるもの、神の領域に触れようとすればするほど、やがて「健全さ」は喪失されていく。面白いのは、>>続きを読む

百花(2022年製作の映画)

3.8

せつない。どんどん記憶を失っていく母と、それに抗うように、どんどん記憶を蘇らせていく息子。心の溝を埋めようにも埋められない。時間を取り戻そうにも取り戻せない。そのことが、殊の外、どうにもせつなすぎて。>>続きを読む

ある男(2022年製作の映画)

3.8

人生は決して平等ではない。出自や境遇を誰も選ぶことはできない。もしも、自分の出自や境遇について、ただの一度も悩んだことがないとしたら、それだけでもう幸せなことなのだ。私が私として当たり前に生きるために>>続きを読む

ファミリア(2023年製作の映画)

3.7

人と人とを分断するもの、結びつけるものは何かという問い。その答えは、血でも、人種でも、言語でもないという思い(というか強い願い)が、ファミリア、家族という題名に込められている。約280万人の外国人が暮>>続きを読む

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)

3.8

こんな映画を観ると、祖父のことを思い出す。戦争から生き長らえた祖父には兄がいて、その兄は、シベリアから帰国している。祖父は戦争をあまり語らなかったけれど、その頃、出兵した人たちのことを今でも折に触れて>>続きを読む

ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY(2022年製作の映画)

3.7

マイケル・ジャクソンしかり、本作のホイットニー・ヒューストンしかり、かつてない成功を収めた大スターが陥ってしまうのは「自分を見失う」ということだ。ファンの期待に応えねばならないプレッシャーも、世間から>>続きを読む

男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎(1981年製作の映画)

3.8

人を憂うと書いて優しいという言葉が寅さんほど当てはまる人はいない。人のために思い悩み、人のことを気にかける。今ではお節介と呼ばれそうな人情がことのほか身に染みる。芦屋雁之助、笑福亭松鶴、大村崑、正司照>>続きを読む

フラッグ・デイ 父を想う日(2021年製作の映画)

4.1

せつない。胸が締めつけられる。美しく正しいものだけが愛だとは限らない。醜く間違っていても、大きな愛はある。例え誰かを傷つけたとしても。愛がすごいのは、倫理を超えたところで、すべてを肯定するところだ。そ>>続きを読む

ビリーバーズ(2022年製作の映画)

3.8

すごい。こんなのを作品にできるから、映画はどこまでも自由だ。カルトが恐ろしいのは、マインドコントロールによって抑制されていたものが、何かのきっかけで箍が外れたとき、制御不能な暴力へと向かうということ。>>続きを読む

わたしのお母さん(2022年製作の映画)

3.8

母親であり、娘であるということが、その人を雁字搦めに縛りつける。離れたいのに、離れられない。許したいのに、許せない。愛したいのに、愛せない。息苦しい。母親らしく、娘らしく。お互いが、個と個、一人ひとり>>続きを読む

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