このレビューはネタバレを含みます
西欧でも評価の高まっていたキェシロフスキに対し、フランス政府は国旗のトリコロールカラーをテーマに映画制作を依頼します。そうして作られた3本の連作は結果的に彼の遺作となりました。
一作目では交通事故で家>>続きを読む
あまりにも儚く、美しいキェシロフスキの代表作。
異なる国で育った別人ながら、双子のようにうり二つの二人のベロニカ。二人の運命は神秘的に絡み合い、共鳴することで物語は展開していきます。この世界のどこかに>>続きを読む
テレビドラマシリーズ「デカローグ」の一話を劇場映画として編集した1本。
窓越しに覗く男と覗かれる女。あまりにも不器用でイノセントな男は愛に幻想を抱いていおり、その愛の対象は不幸にも愛を信じない女へと向>>続きを読む
テレビドラマシリーズ「デカローグ」の一話を劇場映画として編集した1本。
緑がかった瞼を閉じかけているかのような映像の中で、タイトル通り二つの殺人をありのままに、容赦なく描写しています。タクシードライバ>>続きを読む
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死んでからもなお妻を見守り続ける夫。失った夫の存在を忘れられず、何をしてもその穴を埋めることのできない妻。
一見ロマンチックなストーリーですが、その背景では政治的な要素が顔を出し、一筋縄ではいきません>>続きを読む
もしもあの時、あの選択が違っていたら、、という運命の分かれ道を3パターン順に描いたユニークな作品。
電車に乗れたかどうかで主人公の運命は違う方向へと転がっていきます。その主たる違いは政治的立場であるこ>>続きを読む
映画制作に没頭しすぎるあまり、家族からも見放される男を描いた身につまされるお話。
娘を撮るために買ったカメラがきっかけで、主人公は記録映画の撮影を任されます。カメラを通して周りを見ること、そしてそれを>>続きを読む
キェシロフスキが劇映画に乗り出した頃の作品。
まだドキュメンタリーから脱皮できておらず、物語としてのおもしろみに欠けています。自身が信じて進む道が周りの理解を得られず、批判にさらされる主人公。「アマチ>>続きを読む
夫の裏切り行為に対する妻の復讐を描いたサスペンススリラー。
真相が誰にも分からないまま、マスコミの攻撃に合い、謎が深まっていくミステリーチックな前半から一転、謎が明かされた後半からは夫婦の、そして男と>>続きを読む
世界的なヒットを記録したミステリー小説の映画化。
ストーリー自体は秘密の多い一族の闇を暴いていく過程を丹念に、一直線に描いていきます。その中にアブノーマルな性描写が表れるものの、ミステリーとしては普通>>続きを読む
世界最大のSNSとなったフェイスブックの創設ストーリー。実話をベースとしながらも、そのキャラクター描写は大幅に脚色されているようです。
ストーリーは訴訟などトラブルがいくつも起きる割には平坦です。事業>>続きを読む
老人として生まれ、年をとるにつれ若返っていく男の数奇な運命を描いたファンタジードラマ。
最大の焦点は恋人とのすれ違いで、若返っていく自分と年老いていく恋人という対比が普通の恋愛ものとは異なるどうしよう>>続きを読む
誰もが知るゾディアック事件を題材に、犯人を追いかけることに取りつかれていく男たちを描いています。緻密で丁寧なつくりですが、史実に忠実に描くことを優先したためか、ストーリーのおもしろさ、人物描写の深さは>>続きを読む
緊急避難室のある新居に越してきた親子に降りかかる恐怖の一夜を描いたサスペンスです。
少ない登場人物、限られた空間ですが、このパニック・ルームの存在がキーとなって物語を盛り上げています。
敵役がやけに人>>続きを読む
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漠然とした不安を抱える時代の空気感を体現した名作です。
今後人類が迎えることがあるのか分からないミレニアムを目前に控えた1999年。上質な物に囲まれ、情報にあふれ、豊かな暮らしを送っているはずの人々の>>続きを読む
疑心暗鬼に陥るストーリー展開と一見シュールな演出は、後のシチュエーションスリラーや悪夢的サスペンス演出の模範となっているであろう佳作です。
歪んだ人格を矯正する恐ろしいゲームに悪戦苦闘する主人公の姿は>>続きを読む
「羊たちの沈黙」から始まった90年代サイコスリラーブームのピークとも言える傑作。
宗教的な要素を持ったストーリーや猟奇的な描写に目が行きがちですが、引退間近のサマセットとこれから一旗揚げようとするミル>>続きを読む
リドリー・スコットが生み出したSFホラーの金字塔である1作目、ジェームズ・キャメロンがアクション要素を大幅に追加して映画史上でも屈指の優れた続編となった2作目に続く3作目を初監督にして任されたプレッシ>>続きを読む
リドリー・スコットが生み出したSFホラーの金字塔である1作目、ジェームズ・キャメロンがアクション要素を大幅に追加して映画史上でも屈指の優れた続編となった2作目に続く3作目を初監督にして任されたプレッシ>>続きを読む
愛すべき変態性欲の世界。快楽の源は人それぞれで、それは誰にも知られたくないものです。そして隠すことによって増す背徳感もまた、快感なのかもしれません。男子中学生のように真剣なまなざしと熱い情熱、そして謎>>続きを読む
「食」をテーマに3つのストーリーを描いた、個人的なシュヴァンクマイエル最高傑作です。お互いが飯を食うためのシステム。人間関係をそう端的に表したような「朝食」は、彼の一貫したスタンスを示しているように思>>続きを読む
人間の身体ができあがるまでをユーモアたっぷりに描いています。特筆すべきはアソコのシーン。扉を開けてしょんぼりと登場する場面は、シュヴァンクマイエル史上屈指のギャグシーンです。いろんなパーツを手に入れて>>続きを読む
シュヴァンクマイエル史上最もシンプルで、直接的な表現がされている作品の一つではないでしょうか。サッカーを主題に、代理戦争としての政治的メッセージも匂わせつつ、人体損壊のグロテスクさをコミカルに描いてい>>続きを読む
異質なものには攻撃ならぬ口撃を加え、破壊する。噛み砕いていけば、みんな同質なのに。そんな人と人との間に発生しがちなコミュニケーションの不和を感じる「永遠の対話」。いわゆる愛の結晶が、その愛を破滅させる>>続きを読む
覗き込んだ穴から見る無音の世界は、幻想的でインパクト大です。普段の暮らしを思わせる就寝前のルーティーンをいちいち見せるあたりはとてもコミカルで、この規則的な反復がラストのオチにも効いています。映像だけ>>続きを読む
何をやっても思い通りにはならず、期待したものは得られない。そしてそれは抗いがたい運命のように自身に降りかかっている。この部屋はまるでプラハの春当時のチェコの社会情勢を反映しているように思える一方で、そ>>続きを読む
家の周りを手をつないで囲う人々。賭け事に興じる者、抵抗を試みる者、服従する者、まるで社会の縮図のようです。不気味な雰囲気と意味深な結末は素晴らしいですが、メタファーとしては直接的すぎる気がします。台詞>>続きを読む
執拗なまでの反復。そこに生まれるリズムは不思議な心地よさと同時に、これが永遠に抜け出せない迷宮であるかのような不安感を生み出しています。この「繰り返し」は後の作品でも何度となく使用されるシュヴァンクマ>>続きを読む
シュヴァンクマイエル初の長編作品は、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」が原作。シュールレアリズムの源流とも言うべき作品を原作に選ぶあたり、満を持して制作に臨んだのであろうことがうかがえます。これ>>続きを読む
妻に対する妄想にとらわれ、振り回される男を描いたキューブリックの遺作。雰囲気は荘厳ですが、ストーリーはほとんどコメディです。どんなに愛し合っていても、心のうちまでは分からない。だから平穏な夫婦生活を送>>続きを読む
笑ってしまうような言葉の暴力で埋め尽くされた前半と、冷え冷えとした戦場を描き出した後半の2部構成でベトナム戦争を描いています。ただし視点はこの当時すでに出遅れた感のあるベトナム戦争に対してではなく、暴>>続きを読む
超常的な能力をタイトルにしながら、その存在をストーリーからほとんど排除し、あくまで人間の狂気を恐怖の根源として描いたキューブリック唯一のホラー。ホテルの造形や役者の表情、さらにはカーペットの模様に至る>>続きを読む
超常的な能力をタイトルにしながら、その存在をストーリーからほとんど排除し、あくまで人間の狂気を恐怖の根源として描いたキューブリック唯一のホラーのアメリカ公開時のバージョン。
世界展開される際にカットさ>>続きを読む
バリー青年の人生の浮き沈みを淡々と描いた物語。3時間の中でそれなりに劇的な出来事は起こりますが、さほど盛り上がる展開は起こりません。しかし彼より波乱万丈な人生を送っている人がどれだけいるか?と考えると>>続きを読む
「人間以前」から「人間以後」まで、映画史上最大級のスケールで描かれる人類史。我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか。その一つの答えがこの2時間半の中にあります。息をのむような美しい>>続きを読む
原作の方が有名な、おそらくは唯一のキューブリック作品です。少女への危険な愛情というよりは、年の差カップルにしか見えず、原作の持っている危うさを表現できていないことは、キューブリック自身も認めるこの作品>>続きを読む