ブニュエル・ミーツ・ハネケ的な。ダラッとしたパーカーのマーティン少年の不気味な佇まい,スティーブンとその家族を慮るような言葉を吐き,報復感情などという人間くさい感情に突き動かされている気配を感じさせな>>続きを読む
高速道路の建設が進みながらもどこにも行けずパッとしない人々を描いたデビュー作の『リバー・オブ・グラス』は,車を手に入れた女が渋滞気味の高速道路をノロノロ進むラスト・カットにおいて,異性愛カップルの成立>>続きを読む
新作に向けてランティモス予習。理想的な共同体を実現するために子供達にどういう教育を施すべきなのかというのはプラトンの『国家』以来の問題でいまだに答えが導き出せないでいるけれども…。俗悪さに汚されること>>続きを読む
ケリー・ライカート予習始め。郊外家庭の閉塞と主婦の倦怠はアケルマン的なテーマですが実存的にしんどく突き詰めるのではなく,ロードムービーの形式をとりながらカタルシスをどっちらけさせる滑稽な作風になってい>>続きを読む
かなり好きな作品だったな〜〜ワンピースをダシにした細田守の私小説だということは認めたうえでホラー的演出に唸らされる。ワンピ映画を期待したキッズはリリー・カーネーションのグロテスクな造形に号泣か,それと>>続きを読む
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木登のシーンで,図らずも涙を抑えられませんでしたね。いつのまにかいなくなってしまった切符収集のおじさん,足のない復員兵など,子供の視点に忘れがたく残る日常のディテールにより語られる総力戦。
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血まみれの墓場に佇む長身白髪の男と鋭い目つきの黒髪の男,そして鬼太郎を捉えた凄惨なポスターに加えて,市川崑,横溝正史的な閉鎖的共同体を舞台としているという事前情報でおおよそのエグさは予想できたがここま>>続きを読む
昏い闇のなかで静謐に燃えた愛の追憶。女を振り返る女のイメージの反復は,オルフェウスとエウリュディケーのクィアな解釈を見事に示していた。
ノスタルジックな心の柔らかいところに触れて泣かせてくれるだけでなくピンポイントの性癖に黒閃ブチ決めてくるのでなかなかオススメですよ。
恋人同士の対話でも,ショットと切り返しが微妙にずらされてる感じがあったりケイを冷ややかに見つめる同僚達の視点に同化したカメラなどインディーズらしいくすんだ映像的快楽に富んでいる。さらに姉妹の幼少期のノ>>続きを読む
自由と平等の民主主義アメリカの夢,その陰鬱なネガを実験的手法でたっぷりと堪能させてくれる。胸糞映画としてストーリーに注意が向くけれども単純な映像的快楽においてもかなり高ポイントになる作品だ。タランティ>>続きを読む
初見時に全く受け付けなくてトリアー無理,と思っただけで終わっていたので,今回見直すことができてとても良かった。展開にトリアーのどん詰まり世界観ばかりを見ていたけど60年代のアンチ共産主義アメリカ社会な>>続きを読む
打ちのめされた… 流れとしてしかありえない愛を訴訟と疾患の問題に回収してしまう社会のなかにあってジーナ・ローランズ演じる姉とカサヴェテス自身が演じる弟はあまりに孤独。一人旅にはあまりにも多すぎる荷物を>>続きを読む
フィリピン発,どうしようもない男の昼と夜の物語。かたやヤク中のボンボン,かたや長屋暮らしの忠犬ハチ公。昼と夜でマニラも違う顔を見せる。昼パートが好みですが,夜パートのラストシーン,悪名高きスラム街のゴ>>続きを読む
ドアと部屋で個別化されていると同時に,気心の知れない見知らぬ他人が蝟集している郊外団地,その不穏と不気味。音響による恐怖演出が見事。無垢と残酷,未成熟な心にはあまりに危険な能力。人種,社会格差,機能不>>続きを読む
真のアイデンティティを隠すことを生業とするスパイミッションと倒錯的変態イメージの氾濫の中で主人公が自我を見失っていくストーリー展開が不穏に交錯していく。サスペンスが最高点になる手前ぐらいに止まる張り詰>>続きを読む
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戦争の炎,逞しさと美しさの母,異界のトンネルなど宮崎駿的モチーフを総集しつつ,フランス古典アニメ『王と鳥』へのオマージュにもなっていて,原点回帰と総決算を前に本当に幕引きなんだなぁと。眞人と大叔父のい>>続きを読む
公園や屋上など開いた空間でも画面いっぱいに人物を映し出して狭い会話劇を成り立たせている。そのなかで距離を置いた観察者の視点を導入するようにガラス越しに女たちを見つめる少女のカットは印象的。キム・ミニは>>続きを読む
樹木希林も原田芳雄も亡くなってるんだよなあ。家のディテールに積もる時間と記憶の蓄積。冒頭の玄関のシーンでやや長く無人の空間が映るのは小津っぽさなんでしょうか。
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秘密基地のクィアなインティマシー
是枝裕和の(アンチ)セカイ系?
結局のところは湊と依里の二人が,優しいお母さんや熱心な先生たちが思っているのとは異なり,「男らしく」もならず「豚の脳みそ」をインスト>>続きを読む
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荷下ろしと片付け
ゴミ屋敷が片付いていて筒井真理子が台を拭いているシーンが泣きポイントでした。やや社会派テーマ盛りの胸焼け感がありましたものの,いずれも広げすぎず一人の女性の狂気と再生(というと聞こ>>続きを読む
前後編たっぷり使って描かれた一大叙事詩のバーフバリに対して,今作では対照的でありながら共に熱い思いを胸に抱く二人の主人公ラーマとビームのバディ・ムービーというわかりやすく面白い話がコンパクトに展開して>>続きを読む
父王を殺され,王妃である母を拐かされた王子は,一人荒波に船を漕ぎ出し,来るべき復讐の時に向けて刃を尖らせていく…。シェイクスピア『ハムレット』であまりにも有名になった北欧に伝わるヴァイキングと復讐の物>>続きを読む
女たちが出ていった無人の部屋,外界に映るのは風に揺れる樹木,波打ち際。
見たのが3ヶ月前ほどでしたが,ラストはいやはや衝撃…でも「種」として考えたらそれもそうかぁ…と妙に納得もいきました。ヤギたちが人間に追い立てられている場面を描いた絵画を執拗に捉えるシーンがありましたが>>続きを読む
地元民とのほのぼの交流→ミミズ封印の流れの反復にダレかけ、前半の時点でこれミスったなと思っていた。まあ、あれを通じて新海誠が言いたいことというか、あの震災で壊れてしまったこと、日常が壊れうるものなのだ>>続きを読む
憧れるだけだった高級店でパフェを上司に奢ってもらい無邪気にはしゃぐミス・ハリスと彼女を優しくみつめるミスタ・ウィリアムズの姿にだいぶ感極まりました。当然ながら黒澤の名作を継承しつつ変奏しているのかとい>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
治安維持のためならば警察による殺人も辞さない恐怖政治が現在進行形で続いているフィリピンより、ラヴ・ディアスが私たちに見せるのは、まさに自身のうちにある暴力性と罪責感情に苛まれる2人の男の数奇な運命をた>>続きを読む
これでデビュー作って本当かよ笑、と思う快作。資本主義的な開発のスピード感と世代を超えて受け継がれてきた記憶や伝統を墨守しようとするアンチ・スピードの立場がぶつかり合う矛盾のバトル・フィールドとしての現>>続きを読む
対話を徹底してショットと切り返しショットで構成し,フレームから出ていく人物が意味ありげにカメラに視線を向けるなど,印象に残らずにはいない演出が際立ちます。一度重ねて離れた手が再び結び合う動きは極めて官>>続きを読む