えにしさんの映画レビュー・感想・評価

えにし

えにし

悪は存在しない(2023年製作の映画)

3.5

「尊敬されたいんじゃなくて尊重されたいだけ」なんて昔あった言葉が響くのは川上だけで、それは森や鹿には流れていかない
勝手に作ったルールも、理想的なバランスも、むきだしのカオスの前では、塵になって風に消
>>続きを読む

ティファニーで朝食を 4K(1961年製作の映画)

4.2

矛盾でできた部屋の中で汚れた心が、雨に洗い流されていく
雨に濡れる勇気がなかっただけの体が飛び出したから、本当は忘れたくない名前を、今なら偽らなくてよさそうな気がする
We belong to you
>>続きを読む

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

3.8

夜の灯りと朝のまぼろし、時々車道の真ん中を歩いたり、時々虫になったりを繰り返して、熱帯の潮騒を夢見る
すり切れた偶然とAu revoirが寝返りを打って、この場所にいながらどこにでも行ける宇宙を、この
>>続きを読む

Here(2023年製作の映画)

3.9

どこまで行っても人は孤独だってことをつかの間忘れるような永遠を、あるはずないとわかったつもりで、心のうちでは諦められない自分がいる
一緒にいた時間と眉をひそめた記憶を溶かしてできたスープは、心の苔にな
>>続きを読む

かづゑ的(2023年製作の映画)

-

光を感じなくなっても、涙が流れることがなくなっても、手や足が風の感触を忘れても、まだ息をしているから、息を止めない、止めたくない
いい格好してたら本物から遠ざかっちゃうから、裸のままで天国と地獄を巡り
>>続きを読む

コットンテール(2022年製作の映画)

2.0

うれしいことも、悲しいことも、パッチワークみたいに、よれよれとぴかぴかをツギハギしてできているはずなのに、ここには 悲しい のよりどころが よれよれ にしかない

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

4.3

笑われて、詰られて、しおれて、足下を見てばかりだった薄暗い毎日に、ふいに光が差したのは、わたしだけではなかった
家に秘密があるのは恥ずかしいこと、と表向きは誰かをたしなめるようなせりふは、ひび割れた心
>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

3.7

悲しいニュースでラジオはくだをまくから、乾いた怒りをアペリティフで飲み干す
くたびれたルールからちゃちなアバンチュールを取り戻すために、アガペーの切れ端を追いかける
のら犬に名前をつけるような愚かで賢
>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.0

今まで選んできたものが、ほんとうに選べていたのかを知らぬまま、体は日増しに痛みを忘れていく
指で触れたものを信じてきたけど、信じたかっただけだって気づいたから、アスピリンの痛みで時空を超える、会いにい
>>続きを読む

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)

4.5

シケモクみたいにいたずらな毎日の中でだって、何かあると思って、誘うアイシャドウなんてつけてみるけど、ばかみたいな壁の花になる
果物の皮を剥くような愛が欲しかっただけなのに、自分で自分をかどわかしつづけ
>>続きを読む

真夜中の虹(1988年製作の映画)

3.3

一緒にいるとき足は海を見ていて、離れたときも暖かい場所を思っていた
コンバーチブルも急かしてくるから、虹の向こうの夜明けを、待ちながら迎えにいく

ママと娼婦 4Kデジタルリマスター版(1973年製作の映画)

3.9

空振りと問わずがたりの繰り返し、お茶濁そうにも上滑り、ほとほと呆れて気後れで逃げ出したのに、後をつけてくるのはどうして
息がつまるくらい苦しくて、吐きそうなくらい悲しいのに、泣きそうなくらい嬉しい、そ
>>続きを読む

レオノールの脳内ヒプナゴジア(半覚醒)(2022年製作の映画)

4.0

理想や夢の世界の中でだってままならないことばかりだから、カチンコじゃ止められない物語の来し方行く末にすてばちになることも馬鹿みたいだって分かったでしょう
頭の中のゴチャゴチャが形にならなくたって、目で
>>続きを読む

ポエトリー アグネスの詩 4K レストア(2010年製作の映画)

3.5

やせた土の上に落ちた杏の実も、宙に浮いたままのシャトルも、時の川を上ってはいかないけど、花はまた同じ季節に咲いていた
押さえつけても隙間からあふれ出してくるほどの うれしい や かなしい が、ひとりで
>>続きを読む

ポトフ 美食家と料理人(2023年製作の映画)

3.7

鳥のさえずりや虫の声、かすかに差し込む陽の光さえも、混ざり合って溶けていく
洋梨のくびれに触れるたび、二度とかなわない夢を見てしまう

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

3.8

当たり前が当たり前じゃない世界の片隅で、雨に打たれても走り出さなくなっちゃった体は泣いている
私の わからない が わかりたい に変わる瞬間を、君の孤独が君だけのモノである意味を、ぜんぶ飲み干すまで生
>>続きを読む

ほかげ(2023年製作の映画)

3.5

盗んだ瓜が暗い部屋の蝋の火になって、つかの間、傷を忘れさせてくれるのに、ふすまの奥までは照らせない
やけのはらの心がゆきかう街で、気休めのかけらを舐め合いながら、どこまで騙せるのかな?
乾いた筒の音が
>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.2

初めてが初めてじゃなくなったり、裸足じゃ痛いから靴を履くようになったりする度、世界は色づいていくようで、その実混ざり合って濁っていった
散々楽しいモノを食べて、飽きるほどむごいモノを見てきたのに、僕た
>>続きを読む

ファースト・カウ(2019年製作の映画)

3.8

歴史からこぼれ落ちたとるにたらないものたちのアンセムは、とりどりの孤独を混ぜ合わせてできたドーナツの甘い香りに弾ける
凹んだぶんだけはみ出て、夢を見過ぎたぶんだけ唇をかむ
これが泥の舟でも、水の流れに
>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.3

飽くなき世界を尻目に、誰に見せるわけでもない自足の毎日を繰り返すなかで、時々吹くそよ風が、まだ涙があることを教えてくれる
だから色違いの孤独に気づいて微笑むことができるし、ネガの夢から目覚めた朝も僕は
>>続きを読む

栗の森のものがたり(2019年製作の映画)

3.3

そのときが来るのをただひたすら待っていたのは、諦めではなくプライドだったことを、独りの木の下で知る
もしも、やまさか、に意味がないことまでをも飲み込んでくれる栗の森の記憶が、紅い葉に包まれて、村ごと葬
>>続きを読む

コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って 4Kレストア版(1993年製作の映画)

4.0

乾いた筒の音がこだまする中、盗んだタイヤは転がって、ゆりかごを運ぶ歯車は回りだす
ゆらゆら揺れる鏡にうつった私はループを抜け出せなくて、でも本当は、行ったり来たりの中のナンセンスな幸せを転がり続けてい
>>続きを読む

少年、機関車に乗る 2Kレストア版(1991年製作の映画)

2.5

セピア色の知らない世界は、スカスカの足下みたいに覚束なくて、でも穴を覗くみたいにワクワクする
列車に運ばれているようで、実は列車が運んできたはじめての景色に身を浸しながら、色づいていく

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)

3.3

パラダイスに憧れていたけど、現実は死ぬほど退屈なルーティンでヒマをつぶすだけだった
傷ついたり不完全だったりがあっても、いや、それがあるから、いたちごっこみたいに理由を探す毎日に訳分からん恋を落として
>>続きを読む

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

3.5

スクリーンの中のアーネストとそれを見ている私が共鳴したのは、多くを語らぬ序盤から中盤にかけて何が起きているかがてんで分からなかった私と、知らず知らずのうちに陰謀の波に飲み込まれていく彼とが重なったから>>続きを読む

不安は魂を食いつくす/不安と魂(1974年製作の映画)

4.1

全クリしちゃったゲームみたいなゆるい悲しみの中で、だったら指を咥えて誰かを、何かを妬み続けていた方がマシだった?と問い続ける
グラグラの幸せを、不恰好でも心地よいダンスを勝ち獲ったはずなのに、壊れたテ
>>続きを読む

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

4.1

帽子を目深にかぶればかぶるほどかえってボロが出るような街で、今日も鏡に嘘をついている
何もかも見透かされているような街の光から水色の夜に逃げ込んで、傷つけたくないが傷つきたくないだけなことに明け方の影
>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

2.8

たとえすぐそばに、隣にいようとも、あなたはエイリアンで、何も分からない、分かれない
だけどフェータルな傷を隠してできた同じ孤独をかち合わせたら、少しだけ分かち合える

アシスタント(2019年製作の映画)

4.1

先のつぶれたペンで行き場のない言葉を書き殴っているような毎日が、嬉しいと悲しいの境目を消していく
It's not your fault.もI will not let you down again.
>>続きを読む

あしたの少女(2022年製作の映画)

-

食べきれなかった今日を明日に回して、それすら食べきれない明日がまた来るから、無理やり消化して代わりに涙を忘れていく
望めば望むほど夢が遠ざかっていく世界の中、誰も知らない場所で踊る
わざと見逃したSO
>>続きを読む

ドント・クライ プリティ・ガールズ!(1970年製作の映画)

4.3

鏡に嘘をつくたびに、本当は知っていたはずの青春の意味を忘れてしまうから、矛盾でできた部屋から抜け出した
孤独が教えてくれた優しいメロディでこころが裸になったら、うたかたの夢から覚めても、その痛みで生き
>>続きを読む

トルテュ島の遭難者たち 4Kレストア(1976年製作の映画)

3.3

ピンクのシャツと真っ白なセットアップのままでロビンソン・クルーソーを騙ったって、緑に千切れて、青に揉まれて、かたなしになるだけだって、体で覚えなきゃ分からない
モノが溢れ、できることが増え過ぎた世界で
>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.3

無料でもらった石でできた塔を壊して、絵空事の中で嘘じゃない意志を積み重ねていく
自分の神様を自分で見つけるために、背中のファスナーを開ける

若き仕立屋の恋 Long version(2004年製作の映画)

4.4

隠れているからその先を見たいと希うのに、すべてが見えてしまったら終わりが来てしまう気がして、色のついた粽と、香りを纏ったドレスで、あなたに溺れる
あなたが長い旅に発ったあと、あの手の感触だけが残ってい
>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

3.4

解らなかった、から解れなかった、に変わっていったのは、巻き戻せない思い出があることを知ったから
肩で息してるのに笑みを浮かべていたことも、ギプスを外そうと躍起になっていたことも、夜の海に呼ばれていたこ
>>続きを読む

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい(2023年製作の映画)

3.0

信頼を確かめるための言葉で信用を失ったり、勝手に傷つけたくせにそのことで勝手に傷ついたりして、誰のことももう愛せないって思ってたんだろう
フワフワも洗ったら固く重くなっていくように、誰かがヒビを入れて
>>続きを読む

>|