酸基さんの映画レビュー・感想・評価

酸基

酸基

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点と線(1958年製作の映画)

3.0

加藤嘉と志村喬、夢の共演。南廣の演技を補填するためか、周りに芸達者を揃えているが、返って彼のぎこちなさを浮き彫にしているような。山形勲演じる安田という厚顔、不遜な男が良い。種明かしの面白さは希薄で、監>>続きを読む

洲崎パラダイス 赤信号(1956年製作の映画)

4.0

川島雄三の名作。向こう側の遊廓とこちら側の世界を区切るゲート、その境目にある呑み屋という設定が既に面白い。「赤信号」というタイトルは示唆的で主人公達は赤と黄色の中間にいるよう。周辺の人々の中には赤信号>>続きを読む

リズと青い鳥(2018年製作の映画)

4.0

アニメ本編は未視聴。この映画は足による表現が多い。力む、身体の重心を変える、所在なくぶらつかせる。そこに感情を投影する。激しい動きではなく、静の動きであり、描く者の技量が問われる。また「2人であること>>続きを読む

ミアとホワイトライオン 奇跡の1300⽇(2018年製作の映画)

1.5

小虎に対する点数。映画としては全く面白くない。特に前半、主人公とライオンの心が通じ合ったんだなと思える「決定的な瞬間」が無い。そのため、主人公が急に虎キチに変化したように見え、感情移入もクソもないので>>続きを読む

武器人間(2013年製作の映画)

3.8

当時、半ばパンフ目当てで観に行った思い出映画。見直すと前半はやや怠いが、中盤からの惜しみなく武器人間を開陳していくスピード感とヴィジュアルのセンスは抜群(パンフには全キャラの名前と特性が記載されている>>続きを読む

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)

4.0

トリアー自身の自己内葛藤、「ネガポジ関係」のような映画。劇中に登場するあらゆるエピソードもそう取れる。男と女、虎と羊、建築と廃墟、ナチと黒人、潔癖症と殺人。ジャック自身もまた然り。理論が先行して完璧を>>続きを読む

カンダハル 突破せよ(2023年製作の映画)

3.0

アクション映画だが快活さに欠ける。敵役のお膳立てはそこそこだが、もったりしたアクションで余計に残念さが。変わりに中東における武装勢力の異常な分派ぶりが見所(と言うのもおかしいが)。代理戦争の場となった>>続きを読む

ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

デンマーク/アイスランド版「沈黙」のような映画。最近の画角狭い、カット長い群映画の中で1番刺さった。全体に運動があり、360度ゆっくりとパンしていく撮影がグッド。中でもアイスランド式の相撲みたいなシー>>続きを読む

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

いつも通り「倫理的にアウトなテクノロジー」が存在する世界の話だが、今作はどうも話運びが緩く眠気が。ブランドンの持ち味である「サイバーVJ」的映像もいつも以上に話と分離している。彼は話とヴィジュアルの合>>続きを読む

オオカミ狩り(2022年製作の映画)

3.8

やっと字幕付きで観た。やはり漫画過ぎて面白い。一目みた印象そのまんまのキャラ、噴水の如くに湧き出る血、旧日本軍とか生物兵器の設定も完全に趣味で作ってるだろ感が気持ち良い。例のヤツが現れてからはほぼプレ>>続きを読む

ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生(1968年製作の映画)

3.8

言わずと知れた。ゾンビ映画のパブリックイメージであるゴア描写は殆どなく、室内劇として面白い。ゾンビ登場からラストに至るまで、途轍も無い出来事を淡々と描写していく。特に墓場の画の引きとラストカットの呆気>>続きを読む

神々のたそがれ(2013年製作の映画)

5.0

久々に。どう見てもタイムスリップしてるか、地球で撮影してない。こんなものは他の誰にも作れない。

フルスタリョフ、車を!(1998年製作の映画)

4.0

スコセッシの感想通り。検閲時代のタガが外れている。余白恐怖症のように画面が雑然としているし、役者の演技もオーバーアクトの範疇に収まらない。反面、ラストのスターリンの看取りにおける静謐さ。その締まりっぷ>>続きを読む

PIGGY ピギー(2022年製作の映画)

3.0

「太っている」というコトをテーマや演出に活かした1本。緊迫したシーンは「太っている」から深刻に成り切らない笑いを誘い、反面、「太っている=笑い」の構図が後半に重みを帯びさせる。ウェルメイドな映画だとは>>続きを読む

7BOX [セブンボックス](2012年製作の映画)

3.5

パラグアイ製の映画を観るのは初。普通に面白い。巨大市場のワンロケーションを舞台に3軸で物語が展開し、終盤に向かって集約していく。演出や撮影がスマートな映画ではなく、中でも人種が混雑する点(むこうでは当>>続きを読む

第七の封印(1956年製作の映画)

4.0

神ではなく「死」だけが絶対的に存在する陰鬱な雰囲気と意外にもポップな場面達が魅力。日中の姿は滑稽だが、邸宅の暗闇に佇む「死」の姿は顔だけが浮かび上がり恐ろしい。その時、それぞれが浮かべる表情は神を目撃>>続きを読む

女神の継承(2021年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

タイ産モキュメンタリーエクソシズム。演出は最近のトレンドを押さえているなぁという感じで目新しさは無い。ただ、プロデュースがナ・ホンジンというだけあり「チェイサー」や「哭声」と同様に「信仰とは、神とは何>>続きを読む

ドミノ(2023年製作の映画)

3.0

午後ロー枠。ロドリゲス版インセプションのような1本。「フロムダスク」と同じく、彼のシナリオを捻った映画は個人的にはあんまり合わない。どの映画においても主人公たちをメキシコに向かわせる姿勢には笑うが。

マリグナント 狂暴な悪夢(2021年製作の映画)

3.8

流石の安定感。ちょっとしたシーンでも突飛なアングルを入れ、視覚的に飽きさせない点にワン節を感じた。特に後半はサービス精神満載の定食屋状態で腹一杯に。悲しみを背負ったバケモンは堪りませんわ。

怪物(2023年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

前半で蒔いた布石を後半で回収していく映画だが、後半は風合いが異なる。それは、少年が自分と同じ少年を「好き」(ライクではなくラブ)になった事実にどう向き合うかという話だ。大人たちは犯人探しに夢中になり、>>続きを読む

僕のワンダフル・ライフ(2017年製作の映画)

4.0

全てを犬の演技に任せず、ナレーション主体の進行が映画を軽快に進行させていく。転生するごとに犬種や立場も変わるため、一匹の犬の物語でありながらも、人間と犬の様々な関係性が反映される。犬POV視点の映像は>>続きを読む

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

3.0

色々と比喩的な映画であることは分かるが(綿毛とか)、まずはTwitterの全裸中年男性勢にオススメ。後半は良い意味で「一体何を観せられてるんだ…」感が凄い。同じA24組でもアリアスター(好き嫌いは置い>>続きを読む

この子は邪悪(2022年製作の映画)

1.5

ラスト付近の展開、この数年間の映画では1番爆笑したかもしれん。無難な駄作を作るより、このわけわからん選択をした心意気は買うし「ポップコーンムービー」としてはある種正当かもしれない。とは言え、映画館で観>>続きを読む

ブラック・フォン(2022年製作の映画)

4.0

期待より遥かに面白かった。この題材でまさかどんどんスポ根的展開になっていくとはね。「悪魔のいけにえ観た?ベストムービーだわ」「燃えよドラゴンより?」「じゃ2位だな」の会話込みでラスト付近は泣く。

どこへ出しても恥かしい人(2019年製作の映画)

3.5

以前、監督の舞台挨拶付で観た。車内で息子にとって恥ずかしさの極致みたいなエピソードが開陳され笑った記憶。車内で演奏する友川等から、カメラが離れていくシーンは魂だけが彷徨うような感覚があった。まぁその彷>>続きを読む

IZO 以蔵(2004年製作の映画)

3.0

運命も輪廻すら殺そうとすること。これを映画として観るか、友川カズキのMVとして観るかだが、自分は完全に後者なので一定に満足。反面、どうやって予算をゲットしたのかも、大島渚のオファーは断り、この映画には>>続きを読む

ねこぢる草(2000年製作の映画)

5.0

何度観ても無類に傑作。イマジネーションに入り過ぎて壊れる人がいるが、その何歩か手前まではやってると思う。最近の湯浅は漂白された感があるが、本質はこういうところにあると感じる。

夜明けまでバス停で(2022年製作の映画)

3.5

何と言っても柄本明の演技が面白過ぎる。青臭いちゃそうだし、中盤からはピントがあらぬ所にズレてるが、殺された女性への弔いの気持ち、溢れた怒り故か。にしても70歳を過ぎて国に喧嘩を売る熱量がある高橋伴明は>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.0

試合のブレブレ写真、何度も巻き戻される試合映像、それを超至近距離で見る三浦友和。それぞれの目を通した世界。彼女には言葉が無いから、目線を交差させ、殴合うことが自分の心を相手に伝える手段なのかもね。地味>>続きを読む

野獣狩り(1973年製作の映画)

3.8

「新幹線大爆破」を観て思い出し見。ベタな刑事モノだが、藤岡弘の身体の張りぶりとバンジュンの渋みが見所。撮影もゲリラが多く、走り回って気合い充分。こちらも「新幹線」同様スッキリとしない終わり。特に藤岡弘>>続きを読む

新幹線大爆破(1975年製作の映画)

4.0

言わば勧善懲悪だがスッキリとはしない。主犯組の実情を執拗に描き、そこに当時の社会背景を組込んでいるから。とは言え、重苦くはなく、むしろ結構バカバカしいのは東映のテイストか。70年代は日本映画なんか….>>続きを読む

狼/男たちの挽歌・最終章(1989年製作の映画)

3.8

挽歌シリーズとは別。遂に鳩が出る。毎回同じことを擦ってるが、銃撃シーンが120点なのでつまらなくならない無敵モード。メロドラマ風に間に女を挟んでも男と男の物語に落ち着く。意外にも過去一物悲しい終わりだ>>続きを読む

男たちの挽歌 II(1987年製作の映画)

4.0

規模がデカく、話はクソおざなりな続編。米は尊ぶが他の料理は普通にぶん投げるユンファ、急に覚醒するディーン・セキ、火薬の量を明らかにミスった爆破シーン…見所しかない。ラストのカチコミは言わずもがな伝説的>>続きを読む

男たちの挽歌(1986年製作の映画)

4.5

ペキンパー作品と昭和残狭伝を足し、青春映画のエッセンスをまぶしたような、この奇跡的なバランスが最大の魅力。徒手を銃にという変換は単純だが、ロングコート&2丁拳銃のスタイルに当時の野郎共は狂ったやろうね>>続きを読む

SISU/シス 不死身の男(2022年製作の映画)

3.0

想像よりハッチャケてはなく、盛上がりに欠ける。90分枠に収まっている点はヨシ。昨今の無敵親父映画では珍しく怪我をしまくり、また痛そうだ。でもアクション映画において主人公は怪我をしてナンボであるし、強さ>>続きを読む