Blake1757さんの映画レビュー・感想・評価

Blake1757

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658km、陽子の旅(2023年製作の映画)

3.5

旅の中での、主人公が徐々に心を溶かしていく様子を、菊地凛子が見事にかたちにしていた。それを表わす固定キャメラでの長回し中心の何台もの車中のショットも、それぞれにどれもアングルが見事で、目を強く引きつけ>>続きを読む

エドワード・ヤンの恋愛時代(1994年製作の映画)

4.0

数多くある群像劇の中でも、だいぶ登場人物が多く、人間関係も入り組んでいる部類だろう。誰が誰とどういう関係なのかを確認しながら見ることを強いられる。
でも、じゃあ退屈で分かり難いのかというと、そんなこと
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天才マックスの世界(1998年製作の映画)

3.0

ウェス・アンダーソンは、そこまで大好きな監督いうわけではないのだけれど、『サマーフィルムにのって』の監督がインタビューで好きな映画としてあげていて、ちょっと観てみようかと思ってDVDをレンタル。

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山河ノスタルジア(2015年製作の映画)

4.5

初見。作品についてほぼなんの情報も持たずにDVDで鑑賞。
久しぶりに「言葉を失う」という感情を味わった。凄い映画だった。

冒頭の「GO WEST」の、まったく揃っていない素人丸出しのダンス(群舞)で
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ありふれた教室(2023年製作の映画)

4.0

映画が始まった瞬間に、「あ、スタンダードサイズなんだ?」と軽く驚いた。結果として、学校という「閉ざされた空間」を舞台とするこの作品に、この画角はふさわしかったと思う。

この映画は、その閉ざされた空間
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関心領域(2023年製作の映画)

3.5

印象的だったのは、主な舞台となった主人公家族の住む邸宅。広大な庭も含めて、この邸宅がまるで「主人公」のようだった。
特に、強制収容場を遠景に従えた、庭の景観。映像のルックが異様にクリアで、光線が庭の隅
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パリ、テキサス 2K レストア版(1984年製作の映画)

3.5

「午前十時の映画祭」で鑑賞。
僕にとってのヴェンダースは、やはり『ベルリン~』なのだが(近作では『PERFECT DAYS』もよかった)、これももちろん、悪くはない。
いわゆる三幕構成といってよいと思
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水深ゼロメートルから(2024年製作の映画)

3.0

高校演劇つながりで『アルプススタンドのはしの方』、監督つながりで『リンダ リンダ リンダ』と関連させたレビューが目に入っていて、そして予告編がとても繊細で力のある映像だったことで、少し期待値を上げすぎ>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.0

なるべく余計な情報を入れないように気を付けて過ごし、ようやく今日、劇場で観てきた。
僕はもともと「森の映画」や「歩く映画」が好きな質で、つまりはこの「森を歩く映画」も好みのタイプに入る。
冒頭の木々を
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ナイルの娘(1987年製作の映画)

4.0

この映画作品において「物語」はさして重要ではなく、極論をすれば、それは有っても無くてもよいようなものだが、それでもこの映画は、強く胸に迫ってくる。
時折挿入される主人公のモノローグは、何かを説明してい
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ゴジラ(1954年製作の映画)

4.0

「東宝チャンピオンまつり」世代なので、モスラやキングギドラ、ヘドラやメカゴジラはたぶん劇場で観たはず(60年代公開作品はおそらくリバイバル時)。
しかしながら、特にゴジラ・シリーズのファンということで
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リオ・ブラボー(1959年製作の映画)

3.5

応援しているサッカーチームがまた負けて落ち込んでいて、気分転換をしたいがどうしたものかと思ってたとこで、今夜は「そうだ西部劇、みよう」と、思い立った。(少し前に、日芸映画出身の知人から強めに推されても>>続きを読む

コッポラの胡蝶の夢(2007年製作の映画)

3.5

夢幻的な映画世界にどっぷりと浸れるという意味で優れた映画だとは感じたが、ストーリーがあちこちで(場所と時代の移り変わりで)分断される感があって、コッポラは敢えて(おそらく夢と現実の区別をあいまいにして>>続きを読む

台北ストーリー(1985年製作の映画)

3.5

劇伴がほとんどない静かな映画。冒頭のチェロとあとは中盤のバイオリンとピアノ、そのあとはエンドロールまで、たぶんなかったはず(ソースミュージック=劇中音楽は除く)。
中盤まで次々と登場人物が現れ、それら
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レッド・スパロー(2017年製作の映画)

2.5

ツイッターのタイムラインで見かけて、(良い意味で)能天気な「お色気スパイアクション」かと思って見始めたら全然違った。
登場人物が多いのと、アメリカとロシアの諜報組織が鎬を削るお話なのにロシア側同士も英
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12人の優しい日本人(1991年製作の映画)

3.0

少し前にオリジナル(『12人の怒れる男』)を観た流れでの鑑賞。
悪くはないのだけれど、なんとなくダイナミズムに欠ける感がするのは、キャメラの動き(カット割り)がやや平凡だからか。あるいは、やはりヘンリ
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実験4号 It’s a small world(2008年製作の映画)

3.5

Theピーズという日本のロックバンドの『実験4号』という曲に捧げ(dedicate)られた、約40分の短編映画。伊坂幸太郎の短編小説とセットでDVDで販売された。
僕はピーズが大好きなので、この「本+
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リンダ リンダ リンダ(2005年製作の映画)

3.5

序盤の四人の下校シーン(歩いてるとこ)の空気感、そして終盤の縦一列で4人が土手を歩くシーン、そこから続く夜の文化祭会場から体育館のステージまでのモンタージュがすごくよかった。長回し中心のキャメラも好き>>続きを読む

教授と美女(1941年製作の映画)

3.0

日芸映画出身の知人から勧められて2022年にアマプラで見ていたのを、さっき思い出して記録。
思い出したきっかけはたまたまみた「スクリューボール・コメディ」についてのwikipediaの項目の下の方に「
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シックス・センス(1999年製作の映画)

2.5

ネットで『映画の嘘(の魅力)』について書かれた文章(*)を読んで、そこで「トリックエンディング(観客に映画で描かれた現実の理解が完全に間違っていたことを明かす意表をつく結末)」の代表作として取り上げら>>続きを読む

気狂いピエロ(1965年製作の映画)

4.0

2週間前に、「応援しているサッカーチームががっかりな負け方をして、気分を変えたくて、『そうだゴダール、見よう』と思い立っ」て、『勝手にしやがれ』を観た。
今日もまた、チームはふがいない負け方で負けた。
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3-4x10月(1990年製作の映画)

3.0

これを監督2作目(自作脚本では1作目)で撮る北野(および撮らせるプロデューサー)の度胸が凄い。北野のフィルモグラフィーの中でも、かなり物語(プロットと言い換えてもよい)を「解体」しちゃってる部類だと思>>続きを読む

菊次郎の夏(1999年製作の映画)

3.5

久石譲の映画音楽の中で、旋律に関して言えばこの映画のテーマである「Suumer」が最も好きだ。
この「菊次郎の夏」にこの旋律が無ければ、だいぶ違った印象になっていたように思う。
北野武の撮る映像に、見
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π〈パイ〉 デジタルリマスター(1998年製作の映画)

3.0

劇場のポスターだったかに「90年代カルトフィルム~」といった形容がされていたが、まさに「王道的カルトフィルム」。
モノクロームの陰影、クロースアップと超クロースアップ(extream close-up
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サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)

4.5

予備知識ほぼゼロで「高校の映画部を題材にした青春映画(演劇部が題材の『幕が上がる』のような)」だろうと思って見始めたのだが、まったく予想もしていなかった展開で(予告編で明かされていたSF要素も知らずに>>続きを読む

勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

4.5

応援しているサッカーチームががっかりな負け方をして、気分を変えたくて派手なアクション映画か爽やかな王道青春映画でも見ようかとサブスクを探しているうちに、「そうだゴダール、見よう」と思い立った。
今さら
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十二人の怒れる男(1957年製作の映画)

3.5

まったく個人的なことだが、僕は昨年(2023年)11月に、「裁判員候補者名簿に登録」された旨の通知を受け取った。まだ具体的な事件の裁判員に選任されたわけではないが、今年(2024年)中に選任される可能>>続きを読む

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(1964年製作の映画)

3.5

少し前に久しぶりに観た『未知への飛行』に合わせたわけでもないが、ちょうどNHK-BSで放送されたので録画で視聴。
同時期に制作されたモチーフを同じくする映画である両作には何やらいわくつきのようでもある
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市子(2023年製作の映画)

4.0

昨年公開時にツイッターのタイムラインに流れていてちょっと気になっていた。アマプラ開いたら突然きてたので、鑑賞。
ほぼ予備知識はなく、なんとなくヘビーな映画なんだろうと推測していたのだが、思った以上だっ
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.5

いわゆる謎解き型のミステリーだと思っていてあまり興味がなかったのだが、実はなかなか骨太の法廷劇で、僕は法廷劇は嫌いじゃなので、とても楽しめた。
シナリオがじゃっかん要素が詰め込まれ過ぎな感もあるが、手
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HANA-BI(1997年製作の映画)

3.5

北野武のフィルモグラフィーの中でも、もっとも死の匂いに満ちている作品だろう。
絵画によるモンタージュは、失礼ながら作品の中盤までは「策士が、策に溺れ」たような印象で、成功とは感じられなかったのだが、終
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Kids Return キッズ・リターン(1996年製作の映画)

3.0

はんちく(半端)な若者の鬱屈や挫折を寡黙なシナリオで描く本作のようなタイプの映画は本来嫌いじゃないのだが、今一つ物足りないのは、(ボクシングジムを含めた)屋内シーンのショットに力が無いからかなあ。逆に>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

2.0

僕には合わない映画だった。サブプロットの「家族」の話しは余計だった。この映画の作り手はああいうのを入れとかないと商業映画として成り立たないと考えてるのだろうか。『シン・ゴジラ』はそういうのが無くても商>>続きを読む

ソナチネ(1993年製作の映画)

4.5

北野武監督の最高傑作と評されることも多い作品。暴力団の抗争を枠組とするプロットで、拳銃が撃ちまくられ次々と人が死んでいく。
北野が「ソナチネ」というタイトルに込めた意味は分からないが、ルート音(根音)
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.0

ビクトル・エリセの随分久しぶりの長編ということで期待感をもって劇場に足を運んだ。
劇中でのある出来事で物語が大きく動くところまでは、会話中心でそのシーンの多くはクロースアップの切り返しが多く、名作「ミ
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

3.5

三宅唱監督の前作『ケイコ 目を澄ませて』がほんとうに素晴らしい作品で、この映画も期待値を高くして劇場に足を運んだ。
主演の二人がこの場で息をしているような存在を感じさせる演技(人物造形)、季節やその場
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