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ラーゲリより愛を込めてのkuuのレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
3.8
『ラーゲリより愛を込めて』
映倫区分 G
製作年 2022年。上映時間 133分。
二宮和也が主演を務め、シベリアの強制収容所(ラーゲリ)に抑留された実在の日本人捕虜・山本幡男を演じた伝記ドラマ。
作家・辺見じゅんのノンフィクション小説「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」を基に、『護られなかった者たちへ』『糸』の瀬々敬久監督がメガホンをとった。
山本の妻・モジミ役に北川景子、山本とともにラーゲリで捕虜として過ごす仲間たちに松坂桃李、中島健人、桐谷健太、安田顕と豪華キャストが集結。

シベリア抑留に関する 厚生労働省の資料の調査によると旧ソ連地域に抑留された人は約 575,000人(うちモンゴル約 14,000人)。
現在までに帰還した人は約 473,000人(うちモンゴル約 12,000人)
死亡と認められる者 約 55,000人(うちモンゴル約 2,000人)とされてる。
1989年に出版された辺見じゅんのノンフィクションを原作(既読)とする瀬々敬久監督の今作品は辺見の物語が巧みに、加えて感傷的に描かれていました。
二宮和也が演じる山本幡男は、極寒のシベリアでさえも暖めることができるほど大きな心を持った聖人君子とも云える人物。
物語は1945年に始まる。
戦争末期にソ連軍が満州に奇襲をかけたとき、山本は妻・モミジ(北川景子)と子供たちと離れ離れになってしまう。
山本幡男は日本にいる妻や子どもたちのもとへ必ず帰れると信じ、その誓いが、ソ連軍の捕虜収容所での過酷な生活に耐えるための大きな糧となる。
ロシア語に堪能な山本は、しばしば通訳として召集されるが、その道徳的な高潔さゆえに、捕虜や仲間たちからしばしば罵倒の対象となる。
戦争は終わったが、捕虜の中には旧帝国陸軍の階級がまだ残っていた。
基本的な礼儀を守ろうとする山本は、元軍曹の乱暴者・相沢光男(桐谷健太)から反感を買うが、臆病者の松田研三(松坂桃李)には味方になってもらえる可能性がある。
そして、夫が必ず帰ってくると信じてやまないモミジ姿も、彼らの葛藤と重なる。。。

この魅力的な古風な時代劇とも呼べる作品は見応えがありました。
瀬々敬久監督のアプローチは繊細ではなく、キャストの大げさな演技に甘んじている。
とは云え、今作品の壮大な物語に引き込まれないわけがない(CGIに難はあるが)。
戦争とその直後を生きた人々の存在が希薄になるにつれ、あの時代を描いた日本映画は、記憶そのものと同様に、より曖昧になっているし、今を生きるものとして学ぶ点は多かった。
瀬々監督の今作品の脚本は、山崎貴監督の問題作『永遠の0』(2013年)でも脚本を担当した林民夫が担当しているそうです。
『永遠の0』みたいな修正主義的(Historical revisionism)な傾斜は共有していないけど、今作品は、まさに最悪の事態を露呈した歴史の時代に、人間の最良の部分を見出そうとする、同じように熱狂的な作品になることをめざしている。
しかし、今作品の主人公は、ちょい完璧すぎる。
仲代達矢主演、小林正樹監督の『人間の条件』(原作の全6部を3本の映画作品としたトリロジー構成1959-61年)に似ていることを無視することはできない。
小林監督の作品の道徳的な複雑さに比べると、これは地味な作品やけど、大雪の今日は仕事サボってお寒い心には心温まる作品やったのは確かやし、俳優陣の多くは真摯に役に向き合っていた。
しかし、違和感を感じた俳優さんもいたのは否めないかな。
特に北川景子は個人的に冷遇しすきてるんかも知れんけど、自己主張があり過ぎて感情移入が出来なかった。
この原作は1993年にテレビドラマ化されてるそうで、その時の主演は寺尾聰(当時46歳)、妻モミジ役は、いしだあゆみ(45歳)やそうで、いしだあゆみなら想像やけどピッタリやったんちゃうかと。
山本幡男さんの没年は45歳やし、寺尾聰も原作に沿ったキャスティング。
今作品では二ノは現在39歳で、北川景子は36歳。
二ノはギリギリイケても、モミジさん役ががなぁ個人的には残念。
北川景子が落ち着きがないとは云わないけど、実力派の女優を起用した方が良かったんちゃうかな。
なんか、かなり悪意のある感想になりましたが🙇、今作品の内容は素晴らしかったですよ。
わかってはいるんやけど、現在の国際情勢や社会情勢の中で『平和が当り前』のぬるま湯に浸かってる小生には、人生や感性に向き合い、多様性の視野を持って考え受止めて歩みたいと切に思えた作品にはかわりないです。
また、今作品でふと、ジュール・ルナール(フランスの小説家、詩人、劇作家。)の言葉、
『希望とは、輝く陽の光を受けながら出かけて雨にぬれながら帰ることである。』
てのを思い出した。
輝く光を浴びて順調に事が運ぶと思って意気揚々と進んでいる時ほどそれが順調にいかない場合は落胆が大きいモンです。
しかし、そないな時こそくじけることなく希望を持って前を向いて歩んでいくことが大切やと云う意味がこの格言には込められているのではないかと解釈できる。 
希望とは思ったようにいかない状態や困った状態にある時に救いとなるものやし。
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