千年女優

オッペンハイマーの千年女優のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.0
冷戦時代の始まりと共に赤狩りの動き強まる50年代。ソ連のスパイ疑惑をかけられて聴聞会で追及を受けるユダヤ系アメリカ人の物理学者オッペンハイマー。広島と長崎に投下された原子爆弾を開発して「原爆の父」と謡われながら、後に水爆反対の立場に立ち米国原子力委員会のルイス・ストローズと対立する彼の半生を描いた伝記映画です。

拘りの作風で世界的人気を得るクリストファー・ノーランが『ダンケルク』以来となる史実を描く2023年公開の作品で、代名詞であるCGを避けた爆発描写とIMAXとが高く評価されて各賞を席捲。夏公開で興行的にも成功しましたが、『バービー』とのコラボ広告が反感を買ったこともあって被爆国・日本での公開はオスカー獲得後となりました。

歴史的人物の半生を一人称に近い視点でじっくり描いていて、会話中心で退屈しそうな所を時系列操作と劇伴、豪華キャストのアンサンブルで高い緊張感を維持します。それだけに映像としてもシーンとしても不足感のある核爆発描写は画竜点睛を欠いていてスタンスも今一つ曖昧ですが、人が神々の火を盗んだ瞬間を捉えようとする一作です。
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