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ムリナのbackpackerのレビュー・感想・評価

ムリナ(2021年製作の映画)
3.0
第34回東京国際映画祭 鑑賞2作目

クロアチアの島で高圧的で強権な父の下から自由になることを夢見る少女ユリアの、家族を犠牲にしてでも自由になりたいという強烈な反発と成長の一幕。

海。
空の青よりなお青く、何者をも深くその内に飲み込んでしまう、海。
時に神々しき輝きを放つ海。
時に禍々しい闇を纏う海。
作中の大半の時間を過ごすこの海こそ、最大功績の助演者と言っても良いのではないでしょうか?
ユリアの自由を望む心の内を曝け出すかのような青い海は、澄んだ大海の美しさを見せる日もあれば、暗く深い碧の牢獄となって襲い掛かることもある。
果たして、「娘の人生は俺が決める」と豪語する暴力的な父の下から、ユリアは抜け出すことができるのか。


ハビエル、ママ、たっぷり躊躇の時間を残して、パパ。救いを求める叫びの中にこそ、答えが見えたように思えます。
バイオレンスな結末を迎えたいなら、この叫びには父親は現れないでしょうし。
それにしても、最後のシークエンスで父が実の娘に放つ言葉には、心折れる程の深い悪を感じましたよ……。


余談ですが、クリフ・カーティスが出演していて驚きました。つい先日『レミニセンス』で敵役をやっていて久しぶりに拝見しましたが、いやーやっぱり濃いインパクトありますねぇ。
『紀元前1万年』を超える圧力のキャラクターが彼の経歴を彩る日が来るのを楽しみにしてます。
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