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リコリス・ピザのkuuのレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
4.0
『リコリス・ピザ』
原題 Licorice Pizza
映倫区分 PG12
製作年 2021年。上映時間 134分。
ポール・トーマス・アンダーソン監督が、自身の出世作『ブギーナイツ』と同じ1970年代のアメリカ舞台に描いた青春物語。
主人公となるアラナとゲイリーの恋模様を描く。
サンフェルナンド・バレー出身のアラナ・ハイムがアラナ役を務め、長編映画に初主演。
また、アンダーソン監督がデビュー作の『ハードエイト』から『ブギーナイツ』『マグノリア』『パンチドランク・ラブ』など多くの作品でタッグを組んだ故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子クーパー・ホフマンが、ゲイリー役を務めて映画初出演で初主演を飾っている。
主演の2人のほか、ショーン・ペン、ブラッドリー・クーパー、ベニー・サフディらが出演。音楽は『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』以降のポール・トーマス・アンダーソン作品すべてを手がけている、『レディオヘッド」』ジョニー・グリーンウッドが担当。
余談ながら、レオナルド・ディカプリオの父親であるジョージ・ディカプリオは、映画の中でゲイリーにウォーターベッドを売りつける男を演じている。ジョージは、映画で描かれた時代の南カリフォルニアのアンダーグラウンドアートシーンで有名な人。

1973年、ハリウッド近郊のサンフェルナンド・バレー。
子役として活動する高校生のゲイリー・バレンタイン(クーパー・ホフマン)は、ある日学校にやって来た写真技師アシスタントのアラナ・ケイン(アラナ・ハイム)に一目ぼれする。
『運命の出会いだ』と告白してくるゲイリーを、年上のアラナは相手にせず受け流す。
その後、食事をするなど共に過ごすうちに二人は距離を縮めるが、ふとしたことですれ違ったり、歩み寄ったりを繰り返していく。

ポール・トーマス・アンダーソン監督の育った1970年代のサンフェルナンドバレーを舞台に、思いやりのあるオマージュと甘い物語(同時に刺激的でノスタルジックでもある)やし、書くのをやめて染々くる感情に浸りたいとこです。
ただひとつ残念なんは、この時代にいなかった人たちには、細部へのこだわりや緻密な映画作りが、他の人たちと同じように心に響かないかもしれないってことです。
ゲイリー・バレンタインを演じるのは、初出演のクーパー・ホフマン。
彼はまた、父は2014年に46歳で亡くなったオスカー俳優フィリップ・シーモア・ホフマン(オスカー受賞作『カポーティ』2005年)。
ホフマンは、ポール・トーマス・アンダーソンの映画で最高の演技を見せてました。
このキャラは、10代でウォーターベッドの起業家、ミュージシャン、俳優として活躍し、現在は映画やテレビのプロデューサーとして成功しているゲイリー・ゲッツマンをユルくモデルにしていた。
この物語では、ゲーリーは15歳の俳優でハスラーである。
ウォーターベッドの流行であれ、ピンボール店の開店であれ、常に次の大きな出来事を探しているようなハスラー。
若き日のホフマンは、高度な自信と常に笑顔を絶やさず、人々を和ませながら彼を演じている。
学校の写真の日、ゲーリーは写真家のアシスタント、アラナ・ケイン(これも初出演のアラナ・ハイム)と会話をするようになる。
彼女はゲイリーより10歳年上だが、彼の自信と会話術に惚れ込んでいる。
2人が友達になるのは変だと思うかもしれない。
でも、アラナやって変だと思ってるんやし笑。
実際、2人は映画のほとんどで、お互いに惹かれあっていないように振る舞っています。
この状況を不快に思うかもしれないけど、優雅で丁寧に扱われていると断言できます。
ゲイリーが年齢の割に先進的であるのに対し、アラーナは少し発育が遅れている、少なくとも自分自身を見つけようとしている、ダイナミックなデュオに仕上がってたかな。
ゲイリーとアラナの物語が、今作品の中心やけど、アンダーソン監督は多くの小話や追加作品を挿入しており、冷静になったり、見ているものについて考えたりする暇がないほどである。
ブラッドリー・クーパーは、美容師からプロデューサーに転身したジョン・ピータースを演じているが、その役柄の巧みさといったらたまりま1000。
ゲイリーやアラナとのシーンはかなり笑えたシーンでした。
さらに、2度のオスカー受賞者であるショーン・ペンが、レストラン『Tail o' the Cock』で俳優ジャック・ホールデン(明らかにオスカー受賞者ウィリアム・ホールデンのもじり)としてアラナを魅了するのを、小生は畏敬の念を持って見守った。
これらのシーンは、70年代に対する観察であると同時に、巧みなコメディとして作られていました。
アンダーソン監督は、認知度の高いタレントでキャストを固めた。
トム・ウェイツとクリスティン・エバソルは短いシーンで特に効果的で、彼女は実在のエージェント、ルーシー・ドリトルを演じています。 
俳優であり監督でもあるベニー・サフディは、地元の政治家ジョエル・ワックスとして登場し、ジョセフ・クロスは彼の友人役で登場します。ジョン・マイケル・ヒギンズは、アジア系レストランのオーナーという、政治的に正しくない役どころで、ハリウッドの血脈は数え切れないほど多く登場します。
サーシャとデストリー・アレン・スピルバーグ、ティム・コンウェイJr、ジョージ・ディカプリオ(レオの父)、レイ・ニコルソン(ジャックの息子)。
マヤ・ルドルフはシーンがあり、メアリー・エリザベス・エリスはゲーリーの母親役、ジョン・C・ライリーはハーマン・マンスター役で一瞬登場します。その上、アラナ・ハイムの実の姉妹と両親が彼女の家族を演じている。 
ご存じない方もいらっしゃるかもしれないけど、ハイム三姉妹はポップ・ロックバンドのHAIMを構成してて、ポール・トーマス・アンダーソンが監督したビデオも出ている。
レディオヘッドのギタリスト、ジョニー・グリーンウッドは、アンダーソンが最も得意とする作曲家であり、彼の作品はドラマとコメディのバランスを保ちながら、まばゆいばかりの輝きを放っている。
グリーンウッドのスコアを補完するのは、時代がかった楽曲を集めたサウンドトラックである。
もちのろん、時代背景からリチャード・ニクソンやDEEP THROAT(勝手にアメリカのバンドだと思い込んでいて、実際はどこの出身とかも分からなかったが、調べたらドイツのバンド)、ガス欠によるガス管などが出てくるが、アンダーソン監督は決して下ネタに走らせることなく、面白さを追求している。
アンダーソン監督は『マグノリア』(1999)、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)、『ファントム・スレッド』(2017)などの異色作がありながら、アカデミー賞8部門ノミネート、受賞ゼロという快挙を成し遂げて。
この傑作が『パワー・オブ・ザ・ドッグ』と同じ年に公開されたことは残念であり、アンダーソンはまたしても受賞から遠ざかった。
今作品は、観ている間はゲーリーの物語だと思うかもしれないが、時間をおいて観れば、これはアラナの青春物語であることに気づくはずだ。
これは、クーパー・ホフマンとアラナ・ハイムの映画デビュー作であり、本当に驚くべき映画製作やと思います。
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