千年女優

ちょっと思い出しただけの千年女優のレビュー・感想・評価

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
4.0
2021年7月26日に誕生日を迎えた、元ダンサーで現在は舞台の証明を務める照生。昔を思い出して誰もいないステージでひとり踊る彼のダンスを舞台の影から覗き見するタクシードライバーの葉。かつては恋人同士であったふたりの恋愛模様を、その別れから出会いまで照生の誕生部である7月26日をキーに遡りながら描いていく恋愛映画です。

松居大吾監督が友人であるクリープハイプの尾崎世界観がタクシードライバーと乗客を巡る五つの物語を綴ったオムニバス映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』に触発されて作り上げた楽曲を主題歌にして制作した作品で、池松壮亮と伊藤沙莉が演じるカップルの繊細な恋愛描写が評価されて第34回東京国際映画祭では観客賞を受賞しました。

『花束みたいな恋をした』『ボクたちはみんな大人になれなかった』と同じ多くの共感を誘う恋愛物語で、監督らしい人間関係の機微を捉える掛け合いがユーモアと切なさを演出します。かといって過度に美化も卑下もせず「ちょっと思い出しただけ」を時系列を逆にして「別れ」ではなく「出会い」で終わる事でスマートに表現した一作です。
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