牛猫

帰らない日曜日の牛猫のレビュー・感想・評価

帰らない日曜日(2021年製作の映画)
3.0
名家の跡継ぎとの秘密の恋に身も心も捧げる孤児のメイドが、たった一日のある出来事により、すべてを変えてしまう話。

試写会にて。

1920年代イギリスの自然豊かな田舎町の情景が美しい。その中で際立つ上流階級の窮屈さと、愛する者を失うことの喪失感。
主人公のジェーンは本能のままに生きている感じがしてとても魅力的。抑圧されたメイドの仕事から1日だけでも解放されて、誰もいない広い屋敷の中を裸で歩き回る。
台所に置いてあった大きなパイを頬張ってゲップするところとか、小さい頃に珍しく一人で留守番することになった時の自由な感じを思い出した。

そんな彼女と恋する貴族のポールはどこか掴みどころがないというか、生まれながらにして恵まれた身分がありながらも、どこか達観したような何か諦めたような佇まいを感じるのは、第一次世界大戦後という時代背景からなのかな。
3人分の資産を持っているというセリフも、一見するとただの金持ち自慢にしか聞こえないけど、意味がわかると悲しくて虚しい。

オリヴィアコールマン演じる女将さんが主人公にかけた「生まれた時に全て奪われていた。失うものがないのは強み。」というセリフが重くて悲しくて力強い。

全体的にセリフも少なめで、派手な映画ではないけれど、この時代のどうにもし難い身分を超えた恋愛と美しい情景が心に沁みる作品だった。
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