ソラアユム

ある男のソラアユムのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
4.1
題名:ある男
鑑賞日時:2024年3月10日
鑑賞方式:Netflix
評価:4.1(MAX5.0)

『私は誰の人生と生きてきたのか…』


□2024年46本目

□不慮の事故で亡くなった夫の正体に迫るサスペンス

夫の素性を巡るサスペンスとしての魅力で引っ張りながら、決して他人事ではない深刻極まりないテーマを突き付けてくる秀作品。

人が人を知るには“過去”が必要だ。その人がどこで生まれ、どのような家庭で育てられ、どのような経緯で今に辿り着いたか。赤の他人ではなく自分の家族になるかもしれない人ならなおさらだ。それが人の性だろう。一方で、過去が足枷となり、自身が望む人生を歩めない人たちがいるのも事実だ。この足枷が自身のせいでないのなら、それはこの上ない悲劇に他ならない。

素性不明であることが判明した夫=谷口大祐もまさにそのような人物である。過去を清算できないなら過去を改竄するしかない。この苦渋の選択と彼の歩んできた過去が徐々に明かされていく過程が実に心苦しい。

一流俳優が一堂に会した今作の見どころの一つは、言うまでもなく要所要所での迫真の演技だろう。安藤サクラに窪田正孝、江本明という最強の布陣を差し置いてやはりこの男、弁護士の城戸を演じた妻夫木聡の頭一つ抜けた演技に魅了される。弁護士でありながら、夫の素性を調査することになる探偵役を引き受けながら、彼にも実は大きな影=後ろめたい過去が在るのだ。彼が江本明扮する受刑者と行う対話が今作のほぼすべてを物語っているのだが、そこで魅せる平静を装いながらも諦観と怒りに満ちた城戸の横顔が今でも脳裏に焼き付いている。見事。

□まとめ
原作で情報を補完したい秀作サスペンス


以上