カテリーナ

ある男のカテリーナのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
3.8
丁寧に丹念に作られた良作


小説は未読だが
まるで小説を読むような映画だった

一枚の絵画を映し出すカメラ
男の後ろ姿だ
その向こうに全く同じ姿の男が
少し離れて描かれている
まるで鏡に映った姿のようだ
ラストシーンでも同じ絵画で幕を閉じる
ただ、ひとつ違うものが映る
その意味は?


谷口と里枝が結ばれた後の
一家団欒のシーンが自然でとても良かった
海外の実力ある作品に見られる
自然な人々の会話や営みに対する
拘りのようなものをそのまま続けてほしい
充分良かったが
わざとらしさが抜けたらもっと
良くなるだろう

窪田正孝の目に見えない
抽象性を表現する力は他の俳優にない
独特の色がある
鏡に映る自分の姿に父を見て嫌悪する姿や皮膚を引き剥がしたくなると激しく吐露する
トレーニングの走り込みの最中に
突然道に転がりもがき苦しみ
その苦悩の底知れなさを体現する
姿は凄かった

監督が仕込んだヒントは比較的優しいものでお話しの全貌はラストシーンを
巻き戻して見て分かったけれど
面白いミステリー小説を読んだ時の
ときめきを思い出させてくれた
妻夫木聡の最後の台詞の
芝居が冴え渡る。


『蜜蜂と遠雷』の監督だったのね
だから響いたんだと後で納得
カテリーナ

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