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女神の継承のかのレビュー・感想・評価

女神の継承(2021年製作の映画)
1.6
独自のアミニズム的な信仰が根付いた集落における“得体の知れなさ”を恐怖に昇華するという最近のホラーにありがちなやつ。

視覚的な面でのディテールの詰めは、同じく信仰やお祓いを作品の根幹に据えた「呪詛」や「サバハ」はもちろんとして、「コクソン」「ミッドサマー(ウィッカーマン)」にも比肩するほど。映像の満足度はかなり高く、予算が潤沢であることも伺える。

タイの部落における精霊の概念や女神の存在といった、想像を掻き立てられる設定の作り込みも流石ナ・ホンジンと言ったところ。
多くを説明せずにあえて消化不良にすることで解釈の余地を残すのもそれらしい。

しかし、この作品は設定の細かさや優秀なビジュアルに甘えている部分が大きく、宗教ホラーがもはや珍しい存在ではなくなった2022年において、なんの捻りもなくこのような作品に仕上げてしまうことに違和感が残る。

手法としてモキュメンタリーを選択してしまったのも、却って制約に縛られて脚本の自由度を下げてしまっていたように思う。映画の作りがあまりにドキュメンタリーの定石に則しすぎていて、後半の山場に備えて設定の出し惜しみをしていると視聴者に勘づかせてしまうのも上手くない。

二番煎じでこういう路線の作品を撮るのであれば、わけのわからなさ以上に話としての面白さも備わっていないと厳しいということを女神の継承と呪詛を見ることで認識できた。
初見の不気味さだけで勝負できるのは先駆者の特権。この作品は色んな映画を合成して作ったキメラのようで、全くと言っていいほど新しさも怖さもない。

ナ・ホンジンが関わった作品は視聴者に安定して怖さと緊張を与えてくれるという印象だったが、この作品が原因でその評価も揺らいでしまいそう。彼の真価は人間の底知れぬ醜さを抉り出す心理サスペンスでこそ発揮されると思っているのだが、今後もこのようなB級ホラーに携わるのだとしたら非常に残念。
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