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ホワイトナイツ/白夜のCureTochanのレビュー・感想・評価

ホワイトナイツ/白夜(1985年製作の映画)
4.0
高校のとき、名画座で「カリブの熱い夜」と二本立てでやっていたのを、なぜか親父と鑑賞した。カリブのほうは観た記憶があやふやなのだが、フィル・コリンズのAgainst All Oddsが胸に来たのは明確に憶えてるし、この二作は監督も同じだ。本作にもフィル・コリンズの歌があるが、ライオネル・リッチーの大ヒット曲のほうが有名だし、私自身も聴いたら圧倒的なノスタルジーを覚える。セイ・ユー・セイ・ミー。なにしろ声がいい。いい歌を主題歌にしたら、映画も客を呼べた時代である。この映画もかなりのヒットだった。当時、今ほど多くの映画はなかったから、当たっていればそれを観たのである。BTTFやインディ・ジョーンズと同じ時代だ。それにしても、暑かったり寒かったり気候不順な二本立てである。

ボブおじさん師匠の「ナイルの宝石」の感想に影響されて言っているわけだが、この映画自体、私が今の感覚でスコアをつけてもしょうがない気がする。クリント・イーストウッドの「ファイヤーフォックス」という、ソ連から戦闘機を盗む映画をご存知だろうか。当時、我々にはソ連という"異世界"があった。そこから出たり入ったりするだけで、映画になったのである。本作のラストで、人質となった主人公のタップダンサーに起こる事象は、ピアース・ブロスナンの「ダイ・アナザー・デイ」にもあるが、そういう場所はもはや北朝鮮しかないってことなんだろう。今のロシアはおろか中国だって、内部からの動画なんかが豊富に出てくるから、もはや異世界という感じはしない。

ソ連でクーデターが起きベルリンの壁が崩壊する前の、その感じは、今の若者には伝わりにくいだろう。我々だって自分で見たわけではないが、たとえばチャイコフスキーコンクールに参加した音楽家が見たソ連とかからイメージは持っていたので絵空事とは感じない。「ファイヤーフォックス」をテレビ放映で観たときの我々、中高生の興奮はもっと困難だろーと思う。世界が狭くなったのは、寂しいところもある。このタップダンサーはアメリカが嫌になって逆亡命したわけだが、社会主義みたいなものも、もし世界中で一斉に行われたらそこそこ成立するかもしれない。地球に資本主義の国があるうちは、そこに人が集まるから無理なのだ。だけど全部同じってのも退屈だ。

とにかく、そのときの、なんかすごくいいものを観たという感じは大事にしたいので、今もう一回観ようという気になれない。中学生でクリスティの「ABC殺人事件」を読んだときの衝撃だって二度と味わえないのである。その時の感じで4点。
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