アーリー

最後の決闘裁判のアーリーのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
5.0
2023.9.27

やっと観れた。劇場で見とけば良かった。

とある男二人の因縁の物語、という筋書きが否定されるような、はっとさせられる作品。ジャンとル・グリそれぞれの視点から見たそれぞれの主張があり、それぞれが感じた繊細な感情がある。その段階までは最後に行われるであろうこの二人の戦いを盛り上げるような演出を期待した。どちらの言い分が正しいのか、それともどちらも正しく立場や環境、身分のズレで生じた些細なヒビがどんどん大きくなっていった結果なのか。最後に名誉を勝ち取るのはどちらなのか。そんなことを考えながら観る。なるほどジャンの奥さんが因縁に関わってくるか。親に決められた結婚、それでも夫を愛したマルグリッド。ただ趣味が合う色男が現れて、恋が始まって、過ちを犯す。あぁよくあるやつや。まぁでも一概にこの不倫が悪いとは言われへんなぁ。さぁどっちが勝つんやろう。
 マルグリッドの視点が始まった時、それがひっくり返される。いかに男二人の視点が男優位で勝手な解釈がされてたかが浮き彫りになる。女性の地位が低いのは、この時代やし仕方ないかと思いながら観てたけど、確かに色々と我慢してきた部分は絶対あったやろうな。傷つけられたのは女性。その解決のために男は奮闘する。そこに女性単独の解決はあり得ない。当時の法律や常識がそれを許さない。男は女性のためを思って解決に勤しむけど、それは自分の名誉のこともある。私が受けた傷、問題なのに私の力で解決することは出来ず、男の一騎打ちの結果に委ねられる。夫が負ければ嘘つきとして火炙り。夫が勝っても賞賛されるのは彼の方。あんなにも複雑な気分で一騎打ちを観たのは初めて。凄いズレてることをしているように見える。

今の時代の作品という感じ。男のロマンは確かに女性を道具として扱ってる部分があるのかもしれない。けどずっとそれを観てきたから、今作の一騎打ちはすごい複雑で、なんやったら凄い盛り下がる可能性もあった。今まで面白い、かっこいいと思ってきたものが否定された感覚。時代が変わってきて、その中にいる。
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