志麻凛

沈黙のパレードの志麻凛のレビュー・感想・評価

沈黙のパレード(2022年製作の映画)
3.7
時間が取れたのでようやく見に行ってきました!劇場で「真夏の方程式」を視聴してから9年。「マスカレード」シリーズを含め、様々な作品が映像化された東野圭吾作品。その中でも安定とした人気を誇る、ガリレオシリーズの映画における第3作目。

いつもは「知覚と快楽の螺旋」を用いてOPが流されるが、今回は舞と共に静かに”沈黙のパレード”と映し出されるだけ。そこでの視聴者へ向けた気の引き締ませようが好き。そんなタイトルにあるように、『沈黙』をベースに描かれる東京都菊野市を舞台にした、切なさあふれるガリレオ・ミステリー。ちな、セガールは出てきません。

内容部分には深く言及しません。印象に残った部分を抜粋。まずは草薙。蓮沼という人物のせいで、苦く辛い記憶がぶり返してきたことの苦悩や自身へ向ける苛立ちが、所々で垣間見えるのが続いていく。タイトルには、ガリレオと書かれているが、今作は草薙が主人公の物語だと捉えた。湯川のインスタントコーヒーを飲まず、正鵠を射るようなことを言われて取調室に取り調べ後でも佇む。それほど、いつもに増してこの事件に懸けてるのが伝わる。そんで、最終的に湯川のことを示す言葉に心打たれた。

演技としては、北村一輝さんだけではなく、ずん飯尾さんも凄かった。同じ芸人枠でハライチ澤部さんがいるけど、同等に好きになった。特に、蓮沼が呑気にやって来た時に、包丁を持つ貫禄は類を見ないものだった。良いお父さん役を務めなさるな、と感嘆する一方。

トリックはいたって単純なものだったが、そのトリックを仕掛けるまでの人間模様の描き方が見てて痛切だった。大どんでん返し!まではいかないけど、気持ちの上でのどんでん返しが本当に切ない。たらればが絡み合う、一般人の物語にズカズカと真相が暴かれるもんですから、本当に居たたまれない感情に襲われる今作であった。
志麻凛

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