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マティアスのmemoのレビュー・感想・評価

マティアス(2017年製作の映画)
4.8
U-NEXTにて。関西クィア映画祭の配信作品。当事者の視点が描かれた、丁寧で、とても良い短編だと思う。なりたい自分でいるために新たな日常へと旅立つラストも爽やかで素敵。

トランスジェンダーで名前や外見を変えてまだ日が浅いマティアスは、新しい職場では同僚や昔の同級生の視線や会話のひとつひとつに怯え、落ち着かない。付き合ってる彼女は支えようとしてくれるが、最近しっくり来ない感じがある。昔からの友人の悪意のない言葉に傷つき、敏感になる。

特にトランスジェンダーのトイレ利用について最近気になっていた話題のでタイムリーだった。ほかの利用者からの「不安だから反対」の意見はよく見るけど、当事者が直面するであろう不安感、難しさを知れて(想像できて)よかった。シリコン性のものを股間に当ててるんだけど、トイレのとき床に落としちゃって、衛生的じゃないからトイレットペーパーに包んでとりあえずズボンのなかにしまう、のところなんてさりげないけど丁寧。職場であからさまに嫌な言葉をかけてくる男もいたけど、むやみにその話題に触れずタイミングが来たらただ「知ってたよ」と一言の先輩みたいに理解して普通に接してくれる人もいて、それを知ったマティアスが彼を飲みに誘うのがすごくよかった。

彼女とのぎくしゃくした感じも。マティアスと彼女が付き合うことになったきっかけやそのタイミング、たとえば彼女自身はレズビアンなのかバイセクシャルなのかとか、マティアスは女と男どちらとして付き合ってたんだろう、というのも気になったけど、明確にされないまま終わるのもよかった。相手のためにも自分のためにも、さみしいけど、別れを選択するというラストが爽やか…。「あなたにはわたしがいないとダメでしょ」「でもきみには違う」
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