えむ

アリスとテレスのまぼろし工場のえむのレビュー・感想・評価

3.5
たまたま声優初挑戦のおふたりがどんなだか観てみたいのと、他との時間的繋ぎが良かったので観てみた、んだけど。

うーん、なんだろ。
思ったよりも複雑というか、難解で煙に巻かれた感でスッキリしない。

街の一大産業の中心である工場に火事が起きて何かが歪み、空間としても、どうやら時間軸としても切り離されてしまった「何も変わらない」「いずれくる未来のために何も変わらせてもらえない」世界。

ここからはネタバレになるので、見るつもりの人はそっと画面を閉じて欲しいんだけど……



結局は物語の中で切り離された自分たちの世界とは違う、現在進行形の「現実」の存在がわかり、大きな分岐点に立たされる。


自分たちの世界はある種の死の世界のようなもので、未来などないことを思い知るなか、主人公たちがそこから紛れ込んだ子供を元の現実に戻らせて、その子にはある未来へ送りだす物語、なんだけども、

この切り離された世界と、現実の世界の両方に主人公たちは存在しているのが、どう捉えていいものかなとちょっと混乱する。

死後の世界、ではなく、切り離されたパラレルワールドぽい。
で、そのパラレルワールドでは、人々が消えてもいく。

心を動かすことで、その境目を守る龍に喰われて死ぬので、この世界の存在する意味がやっぱり分かりづらくて。

結局は、終盤でおじいちゃんが言うようにでも解釈しないとあっちとこっちの関係が理解できないんだよね。

言うなれば、想い出のポートレートに閉じ込められた自分の欠片たちが生きてる世界って感じなんだろうか。

写真のなか、想い出のなかは何時までも色褪せず変わらない、いやむしろ変わってはいけないし、その瞬間切りとった以外のものを感じると、それはもう「ニセモノ」みたくなってしまうのか。

だとしても、その世界で生きるって何だろうね。
単に閉じ込められて、監視もされてて、それでも生きてなくちゃならない方はたまらないよなあ……

それでも「今を生きよう」とするのは前向きに見えるけど、いやでもこの世界はいずれ消え去る刹那的な世界だし、結局どこに根幹があるのかなって。

アリスとテレスはアリストテレスなんだろうから、プラトンの提唱する理想と現実の2極論を否定して現実主義ってとこに、ある種の理想=物語の世界の終わりをリンクさせたってことなのかな。
で、最高の善は幸福だから、登場人物には幸福を求めさせた、と。

(分からなすぎて調べたよ……)

ラストの中島みゆきの主題歌はすごく合ってたし、納得もしたんだけどね。

難しいっていうか、冒頭に書いたみたいに「煙に巻かれてる」がいちばんしっくり来るな。
えむ

えむ