『私は川のとりこだ』
ラストの言葉に涙が止まらない
すべてはこの美しいラストへ向かって紡がれる
『岩の下には言葉があって
その言葉の幾つかは岩のものだ』
子供時代を弟と過ごした川
彼の才能やその性格を羨んだ時もあった
でも彼の『美しさ』を一番わかっていたのは僕だった
父と3人で川に入ったあの日
あの瞬間
仕留めたデカイ鱒の様に
彼の人生はキラキラと輝いて
あのなんとも誇らしげな屈託のない笑顔は
永久に父さんと僕の眼に焼き付けられた
歳をとり、釣糸を結ぶのもおぼつかなくなったが
いまもなお川に入り、その流れに糸を投げ入れる
僕らの営みも
僕らが愛したこの川の匂いに、そして水に洗われた岩の隙間にすべり込み
僕らから離れて
そこに永久に息づくんだ
だから私は寂しくない
私は川のとりこだ!