くりふ

6・メン・ゲッティング・シックのくりふのレビュー・感想・評価

3.5
【ボミット・リンチの吐瀉マップ】

デヴィッド・リンチが学生時代、初めて手掛けた映画作品。4分間の短編アニメだが、初っ端から、ヘン。彼の妄想原液が、ゲロとなって溢れています。全ての始まりはコレだった。

リンチは初めから、“病気になった”と題しているように、自分が病的な感覚を持つことは自覚していたのでしょう。が、それで他者とコミュニケートするのではなく、その病の正体は何なのか、自分なりのモノサシで分析しているように思えます。

時間という羅針盤に従い、映画という病の地図を作ろうとしている。この処女作にそれが、強烈に刻印されたのではと。妙に説明的なんですよね。…まったく説明できていないけど。

画のタッチは公言通り、フランシス・ベーコンの影響もろかぶりですね。もっと稚拙で、笑いに転んでいるのがリンチ・タッチだけど、こう、悍ましさと共存できるのが独自性かと。

ここから『グランドマザー』まで、“管”に執着しているのが興味深い。管の断面図をぬるぬる運ばれる図が幾度も現れる。地図化の一端なのでしょうが、初期からロードムービーを撮っていたと。www そこから産道の恐怖に結実させたのが『イレイザーヘッド』なのではと。

本作、いわば習作で、何処かに着地させたかったわけでもなく、アニメーション映画で何ができるか、色々と試したのでしょう。その結果が、狂気を記録するまでにイッてしまった。

この処女作に全てがあるとは思わないが、原液がたっぷり詰まっています。…ゲロだけど。

<2023.11.30記>
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