滝和也

ファミリー・プロットの滝和也のレビュー・感想・評価

ファミリー・プロット(1976年製作の映画)
3.5
ヒッチコックの遺作…

2つの男女の物語が
交差する時、
サスペンスが生まれる。

ユーモアとサスペンス
肩の力が抜けた巨人の
軽妙洒脱な語り口…

「ファミリー・プロット」

遺作と言うのは…引退作の様にラストと決めて作られた訳ではない作品の方が多いはずですよね。事実ヒッチは次作の準備をしていたわけで。故にこの作品どちらかと言えばユーモア溢れた軽い筆致の作品なんです。

霊媒師を名乗るブランチとその彼氏タクシー運転手ジョージ。ブランチのお客をジョージが調べて話すと言う詐欺師まがいの商売の中、大富豪の女性の生き別れた跡継ぎを探せば1万ドルと言う話に出会う。その頃宝石商のアダムソンとフランの二人は富豪を誘拐、身代金をせしめていた。跡継ぎを探すブランチ達と次の誘拐事件を起こそうとするフランたちが交錯する時…事件は思わぬ方向へ流れていく。

全く関係なさそうな2つのプロットが一つの物語に収束していくのが面白さであり、そのテンポ、子気味良さは流石ヒッチコックでしょう。小悪党であるブランチとジョージのコンビがユーモアたっぷり(ある意味低俗な位)にお話を進めながら、明らかに悪党であるアダムソンらは比較的ドライかつハードにそれに対応していく。

中々ブルース・ダーン演じるジョージが優秀で真相に迫っていくんですね。またバーバラ・ハリス演じるブランチがコケティッシュで可愛げを振りまくので見ていて楽しい。中盤にある車が暴走するサスペンスシーンの慌てぶりはやり過ぎで笑えました…。

またメインビジュアルであるフランにはカレン・ブラック。この時期大人気だったんですかね。作品内では3番手なんですが、トップにクレジットが出るし、大作他出演作が目白押しです。ハード系と言うかキツめな容姿がこの役似合ってます。あまり好みの方ではないのですが…(笑)

ハリーの災難の様なブラックユーモアに近い作品で…結構真面目な部分もありますが…コメディよりで軽妙洒脱で肩の力を抜いて楽しむ作品に仕上がってます。

ただ…確かに巧みで上手い落語を見ているようで、ヒッチの職人ぶりが分かる作品には違いないのですが、時代性から考えるとより過激にリアルに破天荒になった70年代の作品とは相容れないのかなと…。同年代の作品と見比べると違和感はあったのかなと思います(^^) 勿論…その匠、巧みさは永遠ではあるのですが(^^)
滝和也

滝和也