いずぼぺ

ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言のいずぼぺのレビュー・感想・評価

3.9
ホロコーストのサバイバーやその協力者などの視点からの語りは今までもたくさんあったが、ナチスだった人からの語りをここまで集めたものはあまりないのではないだろうか。
サバイバーからの語りもナチスだった人からの語りももう直接聞くことは難しい時代になってきたので、この作品の意義は重い。

聞き手がうまいのか率直にインタビューに答えるかつての「ナチス」たち。
眉をひそめるような内容もあるが、彼らの話からわかることはナチスがいかに巧妙に組織を拡大していったか、だ。第一次大戦後多額の戦争賠償金に苦しんだ。また次世代を担うはずだった若者の多くが大戦で亡くなった。
国全体が疲弊し未来に希望が持てない状態の時に、民族の誇りをうたい民衆を鼓舞し台頭してきたナチス。子どもたちのシンプルな正義感や判断基準に入り込むなんて容易いことだったし、手っ取り早く党員を増やすには最も効果的な方法だ。誰も後の世に世界中から避難されるなんて思っていなかった。正しいとこ、当たり前のことだと思っていた。
そのとき、私たちはインタビューに嬉々として応えていた老人たちと違う選択ができたであろうか?
またその時が来たら、私たちは歴史を繰り返すことを回避できるのだろうか?
いや、私はその気配を感じることができるだろうか?

第二次世界大戦はたくさんの映像アーカイブや資料が残されている戦争だ。様々な立場や意図をもって記録されている。
それを眠らせるのも未来へと活かしていくのも我々次第なのだと強く感じた。
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