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隔たる世界の2人のtsuraのレビュー・感想・評価

隔たる世界の2人(2020年製作の映画)
3.8
デジャヴする悪夢の意味。

タイムループするというSF的解釈を上手く使ってジョージ・フロイド氏に降り掛かった黒人差別(人種差別)や世界中で跋扈する差別の是非を淡々と伝える本作。

息詰まる緊迫感や苦しさは短編ならではで、その時間的制約の中で"時間"を見事に抽出しつつ、アクション映画さながらのテンポの良さでメッセージを発信している。

ただ、この作品はタイムループするという既視感を感じる日々を積み重ねて主人公が愛犬の待つ家に帰りたいその一心を描いてるに過ぎない様だが、その積み重ねが実は無差別的或いは無抵抗のうちに"殺された"黒人の歴史の再検証なのだという事がよくわかるその作りには驚いた。

勿論、白人警官のレイシズムが偏重たっぷりで描いてる節はある。彼等の目線で見る黒人とはなんぞ?そこに正しい知見にあるのか、それらに掛かるバイアスは穿ったものではないか。

それは幾分思うが問題の焦点は結局のところ、そんな偏重の先端にいる差別感情の高い"普通"のアメリカの白人(警官)が彼等(黒人)の主張を蹂躙して、黒人=取り締まるべき犯罪或いは彼等は力で以って制圧でもしておかないと危険で野蛮な存在。それが罷り通っても正義の主張は正当化されるべき、アイツらはそんな存在なのだという、一部の白人層の先にある"既視感"なのだという重たい事実だ。


彼の死から一年以上が過ぎ世界はコロナ、コロナと騒いでる間にウイルスの変異を想起させるくらいに激変している。

それなのに、ウイルスを殲滅出来ない様に、同じ様に差別はずっと蔓延る。

withコロナではないけど…相手と理解し合い、憎しみが優しさに変わって同じ視座立って"with"が出来るのはいつなのだろうか。
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