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天使と悪魔のYYamadaのレビュー・感想・評価

天使と悪魔(2009年製作の映画)
3.8
【サスペンス映画のススメ】
〈ジャンル定義への当てはめ〉
 ○: 観客の緊張感を煽る
 ○: 超常現象なし

◆作品名:
天使と悪魔 (2009)
 ~象徴学教授ロバート・ラングドン②
◆サスペンスの要素:
・新ローマ法王選出を巡る陰謀
・科学物質の爆発阻止

〈本作の粗筋〉 シネマトゥデイより抜粋
・ハーバード大のラングドン教授は、ルーヴルの一件以来冷戦関係だったヴァチカンから秘密結社イルミナティの陰謀阻止の協力要請を受ける。かつてガリレオら科学者によって組織されるも、ヴァチカンの弾圧で消滅した秘密結社が、新ローマ教皇の選出のため行われるコンクラーベに乗じて復活を果たしたのだ。
・彼らは有力候補の枢機卿4人を誘拐し、1時間ごとに殺害すると予告。また、ヴァチカン爆破のため、スイスのCERN(欧州原子核研究機構)から恐るべき破壊力を秘めた「反物質」を盗み出していた。秘密結社イルミナティの陰謀を阻止するため、ラングドンがローマ、バチカンを奔走する…。

〈見処〉
①ガリレオの暗号がヴァチカンを
 追いつめる…大ヒットシリーズ第2作
・『天使と悪魔』は、2009年に製作されたミステリー・サスペンス。
・原作はダン・ブラウンの同名小説。小説では、本作が「ロバート・ラングドン」シリーズ第1作品であったが、映画化にあたっては、続編『ダ・ヴィンチ・コード』と時系列を入れ替えている。
・監督は前作『ダ・ヴィンチ・コード』から続投となるロン・ハワード。前作では、原作の持つ暗号解読シーンは簡略化し、派手なカー・チェイスを追加するなど、映画的に仕上げたことで「中途半端なミステリー映画」として原作ファン、映画ファン双方から物議を醸された反省を踏まえ、原作に忠実だった前作から変わって、本作は、タイムリミット・サスペンスの要素を強めた脚色が加えられている。

②イルミナティ
・前作『ダ・ヴィンチ・コード』では、聖杯をめぐる架空の秘密結社「シオン修道会」を史実のように描き激しい批評を受けたが、本作でスポットライトが当たる秘密結社「イルミナティ」は、実際に中世に実在した組織。
・科学の促進を是とし、理性宗教の促進を理念としたイルミナティをストーリーの骨子に据えることによって、本作は「科学と宗教の対立」を生々しく描くことに奏功。
・とくに、本作では、カトリックから激しい弾圧を受けた17世紀の「科学者」ガリレオ・ガリレイをイルミナティの首謀者とすることで、鑑賞者の興味を強めている。
・「史上最も金と時間が割かれた裁判」として、地動説を唱えたガリレオの死後約350年後の1992年に、教皇ヨハネ・パウロ2世が誤りであったことを認め、ガリレオに謝罪した「ガリレオ裁判」が示すとおり、「科学と宗教の対立」にはうってつけの人物であるが、イルミナティが創立されたのは、ガリレオの死後100年が経過した18世紀後期。前作同様に、本作も史実とフィクションの境を意識して鑑賞に臨みたい。

③結び…本作の見処は?
◎:「1時間毎にカトリック枢機卿を救い出せ!」タイムリミットを定めた緊張感高いサスペンスとして描かれた本作は、娯楽作品としての鑑賞ハードルを下げ、前作で酷評された「詰めこみすぎ」を解消している。
◎: ローマ、バチカンの名所が多数登場。新ローマ教皇の選出のため行われる集会「コンクラーベ」の描写など、映像素材としても価値が高い。
○:「宗教には欠点がある。それは人に欠点があるからだ」。その裏付けの一つとして「科学と宗教の対立」を描き、マクガフィンにCERNにて生成された「反物質」の登場は秀逸。宇宙の始まりは「ビッグバン」とするキリスト教の概念を壊しかねない最新の科学技術に対する描写は見どころである。
○: ユアン・マクレガー扮する、教皇に仕える侍従「カメルレンゴ」は、清貧さと貪欲さを併せ持つ、興味深いキャラクター。
▲: 一時間毎に枢機卿を殺害する犯罪予告に対して、歴史的なヒントを提供する犯罪首謀者の意図が伝わりにくい。作中後半から、トム・ハンクスによるローマ市内の鬼ごっこを見ているような感覚になってくる。
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