くりふ

Shirley: Visions of Reality(原題)のくりふのレビュー・感想・評価

4.0
【ホッパーで心象風景する】

イメージフォーラム・フェスティバル2013にて。エドワード・ホッパーの絵を実写で忠実に再現し、物語化した作品。

初見では所々、思わせぶりで退屈な時間が過ぎる感じはありました。92分ですが、体感時間としては80分くらいがいいかな?とは思った。でもアイデアは率直だし、ここまで徹底したことが気持ちよいです。

ホッパーの絵を引用する映画は、過去幾つもあったと思います。例えばヴェンダースが『エンド・オブ・バイオレンス』で「Nighthawks(1942)」をまんま使ったり、最近の『ヒッチコック』つながりだと、『サイコ』ベイツ家のモデルが「House by the Railroad(1925)」だったり…。

でも、ここまで徹底再現したものは、私は初めてみました。

女性が登場する12(+1)作品を選び、彼女をシャーリーと名づけ、一人のアメリカ女性の内省的な物語として紡いでいます。描かれた年代順、「Hotel Room(1931)」から「Chair Car(1965)」まで。

シャーリーは女優。仕事への想い…例えばエリア・カザンへの反発等、各年で実際に起きた事件と絡め、リアクションを語っていきます。そして静かな行動が脱線風味に変じ、ホッパーの絵を壊すんじゃ?と緊迫してくる辺りが、映像的には面白いですね。

女優さんはすごい美女ではないですが、現実感あるエロスがいい。でもホッパーが描く女性より肉感薄く、むしろスッキリかも。

個人的には「Western Motel(1957)」での、意外に発展する媚態と、「Excursion into Philosophy(1959)」の、寝返る先のお尻が素敵!(笑)

海外のページを探すと、13の全比較画像がアップされてもいますが、さすがにネタバレな気がするので、例えば1シーンはこんな感じです。

http://mynameisindie.blogspot.jp/2013/04/indielisboa-2013-shirley-visions-of.html

グスタフ・ドイチュという、オーストリアの作家が作っていて、だからなのか、冷静なトーンにまとまっているとは思うのですが、何故アメリカ人が作らないのかなあ…というのは素朴な疑問。

ホッパーに普遍性があるから、できることだとは思いますが、本国で作られた方が、より率直なコクが出るような気はしました。

もちろん、まだ私自身に足りていないところも感じるので、よりホッパー度を深めたら、いつかまた、みてみたいです。掘ったらまだ何か、出そうな気もする映画でした。

<2013.5.6記>
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