アジュナビーヤ

クレッシェンド 音楽の架け橋のアジュナビーヤのレビュー・感想・評価

3.9
これまた書くのが遅くなっちゃった。
ギリギリまだ上映してた新宿シネマートに行って滑り込み鑑賞。

この問題を取り上げるにあたってどのようなラストを描いたのかが、パレスチナ問題に寄り添う身としてすごく気になって見に行った。宗教的文化的問題だけじゃなくて政治的な要素が複雑に絡み合って、並一通りな知識では到底扱えない話だから、音楽は世界を救う!みたいなことで終わらせられないだろうし、反対に、話が平行線のままエンディングを迎えるのは映画というひとつのエンターテイメントとしてナンセンス。そういう点でこのような問題を映画化する難しさがあるのかなって思いつつ、映画館に向かいました…

映画を見てみると、やはり、合同公演は中止になり、字義通りのハッピーエンドではなかった。しかし、両者の関係は平行線のままというわけではなく、映画として成り立っていて面白かった。きちんとした舞台に上がって世界に向けて演奏はできなかったけど、空港でのラストシーンで両者が互いに目を見つめながら合奏する様子からわかるように、あの場所にいたメンバーの中では確かに歩み寄りがあった。音楽を通して互いが互いに敬意を持ち、相手を理解しようとする。ある意味ハッピーな結末だったのかもしれない。

その空港でのラストシーンでは、透明なガラスがパレスチナ人とイスラエル人を隔てている。その場にいたオーケストラのメンバーだけを見れば、な円満な結果だけど、少し引いた視点から見てみるといまだにそこには壁がある、というリアルさを表現していてとても良かったと思う。

こういう交流は、政府レベルでは小さな影響しかないのかもしれない。でも本質は、政治とか外交じゃなくて、一人一人がどう向き合うかにかかってるんじゃないかな。こういう文化的な交流が増えれば世論も少しずつ変わってくるだろうし、国家とかそういうレベルで言えば完全な和解は難しいだろうけど、イスラエル人、パレスチナ人の一人一人の心がお互いに寄り添えば、状況は変わってくるんじゃないのかな。理想論だけど…。現在もこういう交流は少しはあると思うし、なかったとしてもイスラエル人の友達がいるパレスチナ人とかパレスチナ人の友達がいるイスラエル人というのは少数ではあるかもしれないが存在するのは事実であり、そういった人たちを増やすためにこういった活動が増えたらいいなと思う。ヨーロッパで迫害された経験があるイスラエル人と現在非占領国となっているパレスチナ。どちらも劣位に立たされ、「被害者」となった経験がある。それは互いに歩み寄る共通の要素になれるんじゃないかな。



つらつらとなが〜く語ってしまった…
とりあえず両国でこの映画が上演されることを願ってます。