MasaichiYaguchi

ハザードランプのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ハザードランプ(2022年製作の映画)
3.7
地方都市で代行ドライバーとして働く中年男の須貝は、満月の夜、新人の刈谷とタッグを組むことになる。
女子中学生の誘拐事件が発生したりと、「満月の夜には何かが起こる」というジンクスがあるのに、更に何か訳ありで、内に危なげなものを潜ませる刈谷に須貝は振り回されながら、一癖も二癖もある乗客たちを相手にするうちに互いの過去が交錯していく。
映画は、須貝と刈谷の身に起きた様々な「満月の週末」の出来事を、ユーモアやペーソスを交えながら描いていくが、現在リバイバル上映中のジム・ジャームッシュ「ナイト・オン・ザ・プラネット」に相通ずるものがあると思う。
危なげな刈谷だけでなく須貝にも辛い過去があり、恰もそれが満月によって呼び起こされたかのように須貝の脳裏を過っていく。
本作の撮影はオール福井ロケで、更に車内での須貝と刈谷、そして乗客たちの会話を中心にして構成されている。
特に、須貝と刈谷を演じた安田顕さんと山田裕貴さんによる丁々発止の遣り取りは見応えがある。
作品に鏤められていた様々な事情が終盤で解き明かされるのだが、その先に待ち受けるものは何なのか?
慟哭ともとれるような静かな衝撃を残すラストが印象的だった。