復興遂げつつある昭和31年。帝国血液銀行の功名心にはやる行員で、当主の時貞が逝去した財政会牛耳る龍賀一族の相続発表に立ち会おうと人里離れた哭倉村へ訪れた水木。直後に跡目の時麿が斬殺される事件が発生して不審な男の監視を任された彼が、ゲゲ郎と呼ばれるその男と陰謀と死霊蠢く村の暗部に切り込む様を描いたアニメ映画です。
水木しげるの代表作で1968年から繰り返しシーズン化されて放送されたアニメによって幅広い世代に親しまれる『ゲゲゲの鬼太郎』の劇場版となる2023年公開の作品で、過去にも数々の人気アニメを手掛けた古賀豪が『墓場鬼太郎』の第一話からも遡る前日譚を描き、戦争を背景にした物語が観客からの好評を集めて口コミで客足を広げました。
『日本経済の成長と近代化』が「もはや戦後ではない」と宣言した昭和31年を舞台とするなど原作にあった要素を組み込みながら晴れぬ戦後の闇を描きます。とは言え現代との場面切り替えが唐突な冒頭と終盤始め強引さはあって体制批判にしても見境のなさも感じますが、馴染み深い題材でメッセージを伝えようとする意欲は十分な一作です。
