さすらいの旅人

ホテルアイリスのさすらいの旅人のレビュー・感想・評価

ホテルアイリス(2021年製作の映画)
3.5
台日版「O嬢の物語」は幻想的な官能ラブストーリー
【VOD/WOWOWオンデマンド/配信視聴/ビスタサイズ】

題名に魅かれて全く前知識なしに鑑賞。
母親の呪縛から解放されたい若い娘が中年のロシア語翻訳家と禁断の世界に陥って行く物語だ。そこには人間の死や幻想らしきものが入り混じり不思議な世界を形成している。

海辺の街に建つホテルアイリスがレトロ感タップリで目を引く。そして、美しい海岸や懐かしい街並みや路地が、美しい映像で撮影されており何とも言えない情緒感があった。
潮の満ち引きで通路が遮断される翻訳家が住む離島の存在が怪しげだ。過去の娘の父親の死と翻訳家の妻の死、そして身近に起こる売春婦の死など周囲は死の匂いが充満している。離島との間の道は三途の川かも知れない。

場面展開が現実や幻想めいたシーンが重なり合い、何とも異様な雰囲気の映画だ。その中で、娘と翻訳家のエロス溢れる禁断の世界がフランス映画「O嬢の物語」の様に繰り返される。また、夢のシーンも挿入される。小松菜奈に似ている娘役の陸夏は、大胆な演技で圧倒される。

この映画はフランス人好みの内容だと思う。要するに結末はなく、内容のとらえ方は観客にゆだねられているからだ。すべて現実かも知れないし、幻想かも知れない。モヤモヤ感が最後まで残る映画だ。あと、R-15作品のためお子様との鑑賞はご注意下さい。