ぶみ

偶然と想像のぶみのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.0
濱口竜介監督、脚本による三つの短編で構成されるオムニバス。
第一話『魔法(よりもっと不確か)』は、古川琴音、中島歩、玄理出演による親友同士の恋物語、第二話『扉は開けたままで』は、渋川清彦、森郁月、甲斐翔真出演による大学教授と生徒の物語、第三話『もう一度』は、占部房子、河合青葉出演による二十年振りに再開した友人の物語と、三作品は世代も内容もバラバラで、作品間での直接的な繋がりはなし。
ただ、いずれにも共通するのは、文学小説のような台詞を、ややもすると棒読みとも言えるような口調とした喋りや、長回しによる会話劇。
そこに本作品では、一見何気ない日常を静かに切り取っているかと思いきや、さりげない一言から空気感が一変するという転換点が加えられており、冒頭からは全く想像できなかった場所に着地している。
その様は、コメディでもあり、サスペンスでもあり、ヒューマンドラマでもありと、まさに多ジャンルのハイブリッド。
私的には、タクシー車内での他愛もない会話で始まり、驚きで終わる第一話が好みだが、三作品いずれも抜群の完成度を誇っている。
偶然がもたらした出来事が、その先の想像に繋がり、日常の中に隠れている人間性を浮き彫りにさせた良作。

時間にゆっくり殺されていく。

〜Wheel of Fortune and Fantasy〜
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