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ローズメイカー 奇跡のバラのトルーパーcomのレビュー・感想・評価

3.5

#ローズメイカー奇跡のバラ
仏映画。バラ育種家の中年女性が訳ありの職業訓練生3人を雇い一発逆転を狙うコメディドラマ。

6月にイオンシネマでワンデーパスポートという神企画をやっていた時に劇場観賞。非英語の洋画はあまり観ないので、こういう機会がなければ出会わなかった作品だと思う。

■バラ育種家とは
色/香り/花弁の形etc、バラは品種によって様々な特徴を持つ。
異なる品種を交配させることによって、微妙に色が変わったり、複数の種の特徴を併せ持った新種が誕生したりする。

なんでもかんでもかけ合わせればすぐに新種が生み出せるというわけではなく、目論んだ通りにはなかなかいかない。

青色で香りの強い品種はレア、とか
白でここまで花びらが大きいのは珍しいとか色々あって、誕生させることの難易度が高い新種には価値がある。

なんとなくサラブレッドの交配と似ている気もするが、
速さやスタミナというわかりやすい指標があり、優秀な実績をもつ種馬を用意できればある程度の高確率で速い馬が誕生する競馬と違って、
バラの交配は美や香りという、絶対評価軸が不明瞭な世界であり、センスも要求されるのでギャンブル的な要素も強い印象。

また、新種を作り出すのにはかけ合わせる2種のバラを一定数以上それなりの量確保しなければいけないので先行投資が必要で、
資金にものを言わせて交配ガチャを大量に回せる企業育種家が圧倒的に有利な世界でもある。

フランスでは毎年、貴重な新種たちが審査されるコンクールがあり、
そこで高評価を得られたバラは高値がついて、一気に成功を収めることができるという世界。

本作を観るまでこんな世界があることをまったく知らなかったので、かなり興味深く観ることができました。


■ドラマ/コメディ要素
ということで、この業界の設定だけで割と興味を惹かれる映画なのですが、本作のいちばんの魅力は主人公と3人の従業員との人間ドラマの方にあります。

主人公の中年女性エヴは親子代々続くバラ育種家で、過去には大ヒット種を生み出したこともあるが今は落ち目。
潤沢な資金を投資して大規模展開するライバル会社に押され、父から譲り受けたバラ園は倒産寸前の崖っぷち。

先代からついてきてくれている1名の秘書女性以外には従業員を雇う金もなくなり、やむを得ず、職業訓練所から格安で派遣されたいわくつきの3名の素人を雇い入れて一発逆転の新種開発に賭けることにする。

やってきた3名が、刑務所あがりのチンピラ/文句しか言わない中年男性/常時オドオドしているヘタレ女性

この設定を見て「ああ、ベテランのバラ育種家が彼ら3名を人間としても育成していくヒューマンドラマかな」と普通思うが、話は斜め上に展開する。

エヴは素人3人に対し横柄な態度をとったり、すぐ感情的になってブチギレたりと割とクソ野郎な面を見せる。
そして、訓練生の1人フレッドが元泥棒と知るや「よっしゃライバル会社のバラ園に種花盗みにいくからついてきて!」的な超展開に。

最終的には友情・努力・勝利というジャンプ漫画的な感動ストーリーも待ってはいるのですが、
序盤、高尚な世界かに思える設定からは想定外の方向で話が突き進んでいくので飽きずに観られます。

中年オバサンの師匠と、素人で若造の弟子たちっていう関係なのに、
バラへの知識と情熱以外は割としょうもない面もあるエヴが、3人の弟子と喧嘩したり割と人としては対等な関係でやりあうのも魅力。

苦境を共にすることで、恋愛感情とは少し違う形での愛情/絆のようなものが深まっていく様子は素敵です。


【スコア】
★3.5で。

音で意味を聞き取ることがまったくできないので、非英語の洋画はあまり好きではないのですが、本作は割と当たりでした。
公開から多少たった朝イチの回で観たので観客は4-5人くらいしかいなかったけれど、もっと観られてほしいなと思った作品。

内容は想定外にコメディや微笑ましい要素もありましたが、バラ園が広がるカットなどは大画面で観てよかったなと思える美しさがあった。
オープニング3分くらいだけは小洒落た品格のあるフランス映画、って感じの絵で始まります。
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