……えっなにが笑えるのかさっぱり分からないのですが……。この高度な皮肉をそのまま無邪気に受けとる観客にも腹が立ちました、すみません。腹立ちすぎてずっと泣いてたわ。
子供が欲しくて仕方ない夫が、妊娠を望まない妻のピルを甘味料にすり替えて出産させる。この夫が陽気な性格だから面白おかしく捉えられてしまうのかもしれないけどやってることが普通に犯罪すぎる。男性がどれだけ望んでも出産するのは女性なんですよ……身体が変わるんですよ……そんな大事なことを了承なしに仕掛けるの無理すぎる。妊娠発覚してもなおカメラに捉えられるのは夫の方ばかり。騙されてたと気づいてからようやく妻が映されるようになってきて夫の主張が落ち着いてくる。中盤までこの夫がずっと出ずっぱりだからこの終盤で夫の存在感がめちゃくちゃ薄くなる。二人がともに歩んでいかないといけないはずなのに、やっぱりこの二人が対等なときってほとんどない。この作品では妻の方は騙されたと気づいたあと、だんだんとお腹の子を「私の子」として受け入れられるようになってくる。そして出産。助産師さんが神様すぎて泣けるし、新しい生命がうまれる瞬間はたしかに尊いのだけど、それをそのまま「母親というものは、最初は子供嫌いでも自分の子が生まれたら最終的に子供を好きになる」という風には受け取らないでほしい。この作品では子供が生まれてすぐのところで幕を閉じるけど、望まない妊娠によって生まれた子供のことを母親が充分に愛せないケースがあるってことを絶対に忘れてはいけない。
