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クライ・マッチョのLocDogのレビュー・感想・評価

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)
3.5
「その悩み、大胸筋で受け止める」


マッチョだったイーストウッドがメキシコの少年といっしょに車でドライブしたり、馬乗ったりするお話。

イーストウッドは半ば強引に少年をママから引き離したもんだから、ママがあの手この手で手下を使って妨害してきてですね。そこそこピンチになるんですけども、どれもすんなりと解決していく。ちょっとしたラブストーリーなんかがあったり、ドクター・ドリトルのような獣医の技術を披露したりといろいろありました。けっして、暗いお話でマッチョが活躍する映画ではないようです。

彼が演じなければ、まちがいなくただの爺さんのちょいと危険なロードムービー。ところがむかしは肉体的にも、精神的にもマッチョだったイーストウッドが語るとそれなりの魅力がでてくるもんですナ。

ただ、自身が監督した『グラン・トリノ』の二番煎じみたいな印象はどうしても拭えない。

ちょいと前に、プロレスラーの棚橋弘至が「その悩み、大胸筋で受け止める」という本を出していた。マッチョイズムは実に独りよがりで共感力がないものだが、棚橋のように相手の悩みをマッチョで受け止めるというプロレスラーならではの”受けの美学”を体現した本の題名に、これが新たなマッチョの生き方なのだなと痛感したものだ。

本作もまた、マッチョからドロップアウトしたイーストウッドの弱々しく、争わないその姿は本来のマッチョイズムとはかけ離れた悲しい男の果てにも映るが、決してそれは悲観的に映らず、むしろこれこそがマッチョなのだと示しているように思える。

ということは当然、ヒョロガリのわたしですらも、もしかしたらマッチョなのかもしれないと自信が湧いてきた。

しかしながら、ここまで来ると、もはやマッチョとは一体なんなのかというマッチョのゲシュタルト崩壊がおこってしまった。果たして、私は彼らのようにマッチョ(せいしんてきに)だと言いきれるのだろうか。

やはり私はまだまだヒョロガリなんだろう。私のマッチョへの道のりは、果てしなく遠い。
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