kuu

漁港の肉子ちゃんのkuuのレビュー・感想・評価

漁港の肉子ちゃん(2021年製作の映画)
3.6
『漁港の肉子ちゃん』
映倫区分 G.
製作年 2021年。上映時間 97分。
明石家さんまの企画・プロデュースで結構話題なったかな。
先日、『さんまのまんま』特別号で、明石家さんまは、どないなアニメか隠してはいたが、アニメプロデュース第二弾進行中と云ってた。
個人的にら西加奈子は好きな作家の同名小説をアニメ映画化で目を惹いたのを覚えてるかな。
底抜けに明るくパワフルな主人公・肉子ちゃんの声を大竹しのぶが担当。
木村拓哉と工藤静香の長女でモデルのCocomiがキクコ役で声優に初挑戦し、花江夏樹らが共演する。
『海獣の子供』が高い評価を受けた渡辺歩監督とSTUDIO4℃が手がけ、スタジオジブリ出身の小西賢一がキャラクターデザイン・総作画監督、『サヨナラまでの30分』の大島里美が脚本を担当。

漁港で暮らす食いしん坊で脳天気な肉子ちゃんは、情に厚くて惚れっぽく、すぐ男に騙されてしまう。
しっかり者でクールな11歳の娘キクコは、そんな母のことが少し恥ずかしい。
やがて母娘の秘密が明らかになり、2人に最高の奇跡が訪れる。。。

今作品で最も目を引くのは、タイトルにもなっている漁港の肉子ちゃん。
彼女は個性的で、ふくよかな人にアルアル決まり文句にかなりマッチしている。
しかし、原作に比べてチョイ登場時間が短いような気はします。
今作品は、結局のところ、ちょっとした美徳の象徴としてターゲットを絞ってる。
しかし、今作品を観れば、渡辺監督がこの題材で何をしたいのかがこれまたチョイ原作より個人的には見えにくかった。
勿論、ヲチでハッキリとはするけど、また、物語を知ってるからか、感動や驚きはなかった。
明石家さんまは、西加奈子が折に触れ彼のファンだと云ってたこともあり、原作でも彼の事を触れたセリフもあったり、西加奈子の独特な笑いテクに共感したのかと思うが、明石家さんまの笑いの間(ま)からは遠かったかな。
サブいとまでは云わないまでも、笑いの間がかなり気になりました。
さんちゃんはお笑いの達人の域に近づいている芸人の一人やし、そこ口出さなかったのか不思議。
ただ、今作品はニュアンスと洞察力が必要やけど、多少、知識のある映画ファンであれば温かな目でご覧になれ、とまどうことはないとは思います。
肉子ちゃんのキャラ設定に賛否両論あるにせよ、今作品が、多くの類似した田舎の青春ドラマと一線を画す何かを持ってるのは一目瞭然です。
ざっくばらん、福福しくふくよかで、子供っぽい母親が、一生懸命に娘を育てている姿は、この作品にユニークさを与えている。
その思いは、肉子ちゃんの稟質が徐々に明らかになるにつれて強くなり、照れ屋な娘の目を通して、肉子ちゃんの姿を映し出していることがよくわかる。
序章で明らかなように、肉子ちゃんは優しくて愛すべき女性であり、ただバカ正直すぎるところがある。
そのため、彼女は東京を離れ、静かな海岸沿いの小さな町へ引っ越すことになる。
そこで彼女は、娘のキクコのために、平穏な日々を過ごすことになる。
キクコは内気で自信のない少女。
自分が何者なのか、まだよくわからないでいる。母ちゃんの大胆な行動に戸惑い、友達に振り回されている。
変顔の癖がある二宮と親しくなるが。。。
原作では気がつかなかったけど、この二宮くんはチック症を患っていて、そのケアとして箱庭療法の心理療法をうけてると見受けられる。
因みに、チック症とは、まばたき、顔をしかめる、口をゆがめる、口を尖らせる、舌を突き出す、首を左右に振る、肩をびくっとさせる、すくめる、腕を振る・まわす、地団太する、跳び上がるなどの動きを本人の意思とは関係なく繰り返してしまう。初発症状は、まばたきなど顔面に多く認められる障害のひとつ。
スタジオ4℃の作品は、アニメーションのクオリティはもちろん、画風も独自の工夫が凝らされてて、背景美術はジブリを彷彿とさせますが、全体的にディテールにこだわってます。
ただ、好き嫌いはわかれそう。
一方、キャラデザインは、より流動的でした。
特に肉子ちゃんのキャラは、キクコの気分次第で何段階にも抽象化されて登場する笑。
フラッシュバックのシーンでは、より落ち着いた古典的で過去と現在の対比を巧みに表現されてました。 
サウンドトラックも最高とまでは云わないまでも良かったです。
ただ、陽気で情緒的で、バラエティに富んでいるが、どの曲も際立っておらず、映画に独特の雰囲気を与えていないのは否めないかな。
ほのぼのとした田舎町のドラマのような雰囲気を追求した作品やし、それほど驚くことではないんやけど、もう少し大胆にやってみてもよかったかもしれへんな。
今作品は、既成のジャンルの決まり文句を踏襲し、少しばかり安易に作りすぎたと感じる瞬間もあるが、しかし、『漁港の肉子ちゃん』の良いところは、テーマやキャラに興味深い展開を与えていること。
そのため、このドラマは単純すぎたり感傷的になったりすることないが、逆に感動の泪を流すことはなかった。
観る側は偏見や単純な反応にとらわれないなら失望しないとは思います。
スタジオ4℃は25年以上にわたって、日本(ひいては世界)で最もクリエイティブで革新的、かつ挑戦的なアニメーションスタジオの1つとしてその地位を確立してきた。
今作品は、その名声を汚すものではないとは個人的には思います。
彼らの作品の中で最も決定的な作品ではないけど、ベンチマークがこれほどならば、それはほとんどマイナスにはならないかな。
画風はよく、アニメーションは愛らしく、キャラは心地よく変化する渡辺監督の選択は報われてるかな。
監督の多才ぶりを見事に表現しており、西加奈子への贔屓目もありますが、個人的に愛さずにはいられない作品でした。
あえて書くならば、個人的には原作の方がより面白かったです。
kuu

kuu