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スペンサー ダイアナの決意のkuuのレビュー・感想・評価

3.8
『スペンサー ダイアナの決意』
原題 Spencer.
映倫区分 G.
製作年 2021年。
2022年10月14日公開。
上映時間117分。
クリステン・スチュワートが、ダイアナ元皇太子妃を演じたドラマ。
1991年にクリスマス休暇を過ごしていたダイアナ妃が、自身の人生を見つめ直して重大な決断をする。
監督は『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』などのパブロ・ラライン。
ジャック・ファーシング、ティモシー・スポールのほか、サリー・ホーキンス、ショーン・ハリスらが共演する。

1991年のクリスマス。
ダイアナ妃(クリステン・スチュワート)は、クリスマスを祝うために王族が集まるエリザベス女王の私邸サンドリンガム・ハウスへ向かう。
チャールズ皇太子との関係は冷え切っており、不倫や離婚がうわさされているにも関わらず、周囲は平静を装っていた。
目やゎダイアナは、外出しても他人からの視線を感じ、自分らしくいられる場所がないことに追い詰められていき、やがて限界に達した彼女は、ある決断を下す。

映画を見る人なら、著名な歴史上の人物を描いたものを何作品かは見たことがあると思います。
しばしば伝記映画や『その時歴史は動いた』、『世紀の瞬間』、『大きな局面』等々の形で。
しかし、今作品はオリジナリティと創造性において見る価値はありました。
今作品は、事実とフィクションが混在していますが、主人公であるダイアナの心の中にしっかりと根ざしていました。
歴史上の人物を現代的な問題の解決に利用する演劇の伝統に基づき、今作品では、それ以上のことが語られています。
名声、英国王室の伝統、タブロイド思考文化、ジェンダーの二重基準。
多くを語らずとも重みのある映画です(これは文字通り、登場人物がメッセージを押し付けているわけではないちゅう意味です)。
そして、その多くは、そのプレゼンテーションに関係している。
その典型的な例がオープニングで深く快適な舞台、のどかなイギリスの田園風景が描かれていました。
しかし、カラーグレーディング(画像や映像に色彩の補正を加えることで、作品に臨場感や雰囲気を出し、完成イメージに近づける工程)、撮影、テンポ、そしてもちろん音楽の組み合わせによって、今作品は異世界のような空間へと変貌させます。
特に、女王の別荘に入り、精巧にデザインされ、装飾された部屋を見たときはスクリーンから目が離せませんかった。
目で見て楽しむことができ、美しさと意図に溢れていました。
今作品は音楽なしには成立しないと思うくらい前面に押し出し、感情や色調の重責を担っていました。
そうでなければ、優しさや安らぎを与えることができるシーンが、不穏で不快なものとなってたかもしれない。
今作品にとって、音楽がどれほど重要であるかとちゅうことを抜きに感想は書けないかな。
今作品には良いところがたくさんありましたが、クリステン・スチュワートがそれをさらに素晴らしいものにしています。
彼女は本当に自分の演技に没頭しており、目立ったメイクアップも何もしていないので驚きです。彼女の物腰、癖、衣装、そして髪から彼女はダイアナを体現しており、たとえ文字通りダイアナに似ていなくとも、正直、それはさらに素晴らしいこととこ思います。
彼女の演技は少し息が荒い感はした(ダイアナの話し方を参考にしつつ、アクセントを残すためかな)。
繰り返しになりますが、今作品は心理ドラマであり、歴史フィクションであり、ここで起こったことは何も確認されてない。
そして、今作品では、ダイアナにほぼ完全に焦点を当てるちゅう、魅力的な芸術的選択がなされている。
彼女の人生を動かすドラマや葛藤は、チャールズ皇太子や女王と交流するいくつかを除いて、ほとんど画面の外に出てきます。
その代わり、スタッフとのやりとりがはるかに目立ち予想しなかった不吉な雰囲気を映画に与えてる。
どんなドラマの描写も、目の前で繰り広げられる感情には及ばないので、最終的には良いアイデアだったと思います。
ドラマ、家族をほとんど画面に出さないことで、それ以外の部分がより効果的になったというのが正直なところです。
ただ、今作品には、チョイと放漫なところがあった。
ラスト近くのシークエンスは、衣装部門が作ったものを全部使うための云い訳のように見えた。
そして、象徴や意味があることはわかる。
ある時点で、観てる側がそのシークエンスの意味を理解するために頭を悩ませる必要があるなら、それは価値のあるものを伝えなかったちゅうこととなりうる。
また、王室やカミラ、チャールズ皇太子の姿をもう少し見せても良かったのではと思いました。
色調的な観点からの選択は理解できますが、そのせいでダイアナに感情移入するのが難しくなっているように思いました。
彼女が被害者になったり、不誠実な夫に対処している姿はあまり見られない。
しかし、そのようなやり取りがあったとしても、今作品は素晴らしいのは変わりないし、もう少し上映時間があればと思いました。
残念な点今作品は、イライラさせる方もいると思います。
奇妙で異端な映画だからというだけでなく、多くの人がダイアナと王室に対する今作品の見方を嫌うのではと思うからです。
それはさてコキ、今作品は面白かったです。
感覚的な饗宴でありながら、世界中のあらゆる特権を持つ人が、我々のために静かに苦しんでいるという、深く個人的で力強い物語を伝えることに成功していると思いますし、素晴らしい作品でした。
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