いしんじ

竜とそばかすの姫のいしんじのレビュー・感想・評価

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
1.0
説明がキチキチに詰められて、シーンは気持ちよくないツギハギで、鑑賞中の感情はまるで逐一指定されるような感覚。私には、全く合わなかったです。

セリフで全部説明されてしまうから、悪い意味で頭を使わずに見れてしまう。それは、観る側の、映画に対する能動的な矢印をいつの間にか剥いでしまう。

人の感情を追っていきながら、色んなことを知らぬ間に平行に考えて、思考を巡らせて観ていこうする中で、登場人物や制作側が「これはこうだよ!」と言ってしまう。それらは適所で必要なことではあるが、こうやって何もかも説明されていくと本当に観る側の脳が止まる。脳が止まるということは、感情も止まってしまう。

だから、歌声を聞こうが、想いが届こうが、何も思えない。感情を止められてしまっているから。「感情の舵」が錆びついて固く動かなくなってしまっているから。


シーンがツギハギであることについては、ツギハギであること自体そのものに対しては悪い事だとは思っていない。例えば『アメリ』の、同時進行で進む構成は私には気持ちよかった。あれは、ウマい焦らしだったから。
それに対してこれは、一つ一つのシーンが悪い意味で「独立」してしまっている。「これはこの役割を持ったシーンです」という制作側の計算が、露出してしまっている。だから、まるでプロットを読まされているような気分。「映画を観ている」という気分にはなかなかなれなかった。

それに似たようなことであるが、感情を指定されているように感じる。「ほら、ここ、泣けるでしょう?」とか「ほら、胸アツくない?」みたいな。すごく、くどい。私の感情は私の勝手にさせてくれってやっぱなってしまう。

だからなのか、人物の感情も「単純」に感じた。厚みがない。「人間の言葉」ではなく「脚本の言葉」。誰からも「生きている感じ」を感じられなかった。

ネットの人々の無責任さや、勝手な発言とか、そういうのも、今の状態ではただの「聞き飽きた説教」の域に留まっていて、もっと活かすか、要らないか、どっちかだと思う。

美女と野獣の要素も、あんなにもそのまま入れている割には「どうして入れたんだ?」と思わざるを得ないです。


なんか本当に、全体的に、ゴチャっとやりたいことリストを提示されてそれで終わったみたいな感じです。本当に合わなかったです。
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