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モーリタニアン 黒塗りの記録のYYamadaのレビュー・感想・評価

3.8
【実話に基づく傑作映画たち】
 ~事実は小説より奇なり

◆ベースとなった史実
〈9.11アメリカ同時多発テロ事件【4】〉
 ~14年間に渡る不当な収容
  2001年-2016年
・場所: キューバ/米軍グアンタナモ収容所
・人物: モハメドゥ・ウルド・スラヒ

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・弁護士のナンシー・ホランダーとテリー・ダンカンは、モーリタニア人青年モハメドゥの弁護を引き受ける。アメリカ同時多発テロに関与した疑いで逮捕された彼は、裁判すら受けられないまま、拷問と虐待が横行するキューバのグアンタナモ米軍基地で地獄の日々を送っていた。
・真相を明らかにするべく調査に乗り出すナンシーたちだったが、正義を追求していくうちに、恐るべき陰謀によって隠された真実が浮かび上がる…。

〈見処〉
①あれから20年…暴かれたアメリカの闇
・『モーリタニアン 黒塗りの記録』は、2021年に製作された法廷サスペンス・ドラマ。監督は『ラストキング・オブ・スコットランド』のケビン・マクドナルド。
・本作は、モハメドゥ・ウルド・スラヒの著書「グアンタナモ収容所 地獄からの手記」を題材に、2001年11月にアフリカ北西の小国モーリタニアの現地警察による連行後、米国政府に身柄を引き渡され、ビン・ラディンが殺害された2011年よりも後年の2016年11月までグアンタナモ収容所に収監され続けたモーリタニア人の青年と、彼を救うべく奔走する弁護士たちの姿を描いた、実話を基に描く作品。
・敏腕弁護士ナンシーを演じた主演のジョディ・フォスターは、本作にて第78回ゴールデングローブ賞で助演女優賞を受賞。
・共演は軍の弁護士ステュアート中佐を『ドクター・ストレンジ』のベネディクト・カンバーバッチ、モハメドゥを『預言者』のタハール・ラヒム、同僚弁護士テリーを『きっと、星のせいじゃない。』のシャイリーン・ウッドリー。

②米軍グアンタナモ基地
・本作に登場するグアンタナモ収容所を配する、グァンタナモ米軍基地は、キューバ東南部のグァンタナモ湾に位置するアメリカ海軍の基地。
・本基地がアメリカの敵対国であるキューバ領土内に位置しているのは、米国の援助によりスペインから独立したキューバ新政府が1903年に、米国政府に対し永久租借を認めたため。
・当基地の敷地内にはキューバで唯一のマクドナルドが存在、本作でもそのシーンが登場している。
・2002年から、基地内にアフガニスタンやイラクでの対テロ戦争で拘束した人物を収容するグアンタナモ収容所が設けられた。
・悪名高いグァンタナモ米軍基地は、本作以外にも『ア・フュー・グッドメン』(1992)、『グアンタナモ 僕達が見た真実』(2006)、『シッコ SiCKO』 (2007)にてスクリーンに登場している。

③結び…本作の見処は?
◎: 不当に14年以上も収容され続けた「生き地獄」のような実話でありながら、悪人が登場しない稀有な人間ドラマ。タハール・ラヒムの凛とした演技に加え、対立関係にあるはずのジョディ・フォスターとベネディクト・カンバーバッチの両弁護士による奇妙な信頼関係が物語を重厚にする。
◎:「これは事実なのだろうか?」 サイバーパンク映画のような米軍による拷問シーンは、衝撃的。
○:「こんなに歳をとったの!?」 と驚くほど、白髪に皺だらけのジョディ・フォスター。本作のエンドロールに登場する実在のナンシー弁護士に寄せた演技であることに納得。
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