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浅草キッドのkuuのレビュー・感想・評価

浅草キッド(2021年製作の映画)
3.9
『浅草キッド』
製作年2021年。上映時間122分。

ビートたけしが自身の師匠である芸人・深見千三郎と過ごした青春をつづった自伝『浅草キッド』を映画化。
テレビドラマでは何度か製作されてたかな。

今作品は、劇団ひとりが監督・脚本(意外にやりよるなぁ。ただ、レニー・ブルースを意識しすぎで、ディスってるように見えなくはない)を手がけ、多くの人気芸人を育てながらも自身はテレビにほとんど出演しなかったことから『幻の浅草芸人』と呼ばれた師匠・深見や仲間たちとの日々と、芸人・ビートたけしが誕生するまでを描き出す。
Netflixで2021年12月9日から配信。

深見を大泉洋、タケシを柳楽優弥が演じ、土屋伸之(ナイツ)、門脇麦、鈴木保奈美などが脇をかためる。
鈴木保奈美、門脇麦がヌードダンサー役やし、チョイエロ期待したが、浅ましい願いは儚く消えた。ただ、俳優陣はエエ味だしてました。
また、余談ながら、吹き替え言語にはポルトガル語と英語があったし、時折変えて観てみたが、演技も大切ながら声の質って演者を造るひとつなんやなぁと思ったら笑えた。

昭和40年代の浅草。
大学を中退し、『お笑いの殿堂』と呼ばれるフランス座のエレベーターボーイ(こないな仕事があったんかと驚いた)をしていたタケシは、深見のコントにほれ込んで弟子入りを志願。
ぶっきらぼうだが独自の世界を持つ深見から、“芸ごと”の真髄を叩き込まれていく。
歌手を目指す踊り子・千春や深見の妻・麻里に見守られながら成長していくタケシだったが、テレビの普及とともにフランス座の客足は減り、経営は悪化していく。
ロマンスシーンはキュンです💗でした。
やがてタケシはフランス座の元先輩キヨシ(先輩やったんや)に誘われ、漫才コンビ『ツービート』を結成。
深見の猛反対を押し切ってフランス座を飛び出し、人気を獲得していく。
作中、門脇麦が『ジョニーへの伝言』唄うがふと思い出したのは、福岡県で暮らしてたころ、お世話になった大先輩がこの曲をうたう高橋真梨子と深い恋に落ちたけど、彼女のスカウトを機に別れた(16才ころ)ロマンスがあったって話を聞いたのを思い出した。
芸の道は必ず淡い想い出が付きもんなんやろなぁ関係ないはなしやけど。

今作品を現代風にするなら、地下アイドルの劇場ライブのスタッフ(野郎)の青春かな。
引きこもりからやっと抜け出た野郎が、アイドルのステージの幕間、ヲタ芸でケミカルライト(化学反応により発光する照明器具)を軽やかにブン回し、頭上で手拍子を叩きながらその場で右や左に回転ジャンプをするマワリや、斜め上を指さした状態から腕を引くロマンスといった技を繰り広げ踊る野郎どものリーダーに弟子入りするって、感じの話になるんやろけど。
一昔前は、なんちゅう粋で人情味ある芸人が多かったんやろか。
ヲタ芸もキレッキレなら粋やけど、今作品じゃタップダンス。
リズム感ない小生からしたら夢のダンス。
北野武はリズム感があったんやろなぁと。
せやし、タップの腕前は置いといても、人の空気を読みリズム感溢れる間を取って、感情の隙間でタップする。
そして、今に至るんやろと思う。

しかし、北野武の師匠深見千三郎は、昔気質の芸人やったんやろなぁ。
長門勇(この人、役者でしか知らん)や東八郎(万札を扇子替わりにする東 貴博の父ちゃんとしか知らん)、萩本欽一、ツービートなどの師匠らしいが、テレビを嫌い、幻の芸人なんて云われたらしい。
以前はどの世界にも野郎が野郎に惚れる(カマ掘られんのはいややけど)先輩方々が沢山いた。
今作品は、そないな粋で鯔背(いなせ)な師匠から芸を盗む清々しい弟子、青年北野武を描いてた。
また、もはや説明不要とも云えるビートたけし。
芸人としてだけではなく、俳優、絵画などその才能は多岐に渡り、映画監督・北野武としては“世界のキタノ”と呼ばれ、まさに日本を代表する“唯一無二の天才”である彼の光を見出だした師匠にはなんか、涙が出る。
たけしの才能を見出されなきゃ彼は銭ならん箸にも棒にもかからない野郎で終わったかもしれない。
全ての人には光るものを持ってる。
それを見出し、叱咤激励の元に導く先人が居るか否か。
それが時には家族であったり、恩師となる先生、その道で生きる人でないかも知れないが、その人の勘が大きく作用する。
そんな意味では、恵まれた環境ではないにせよ、ビートたけしは、先人に恵まれてたんやろなぁと微笑ましく今作品を視聴した。
あと、先人に恵まれたとて、才能が開花した本人が後人を導く際、上手に導けるかと云うと、ビートたけしの弟子たちは、いまいちうだつが上がらないのは人生オモロイ。

偖、今作品には多くの面白い場面がありましたが、ただビートたけしのキャラ設定が不十分かなぁと思う(日本人には馴染みの芸人ながら)。
海外の視聴者は、映画監督としての北野武の存在とかは知ってても、お笑い芸人としての彼を知らないし、芸人からの世界のタケシ・キタノ故のドラマ発生を知らないと不利益を被ることになる。
今作品だけを見たら、タップダンスを習得するタケシの想い以外には、漫才やその他の隠された才能はあまり見られず残念かな。
まぁ、時間の限りが短い映画やし仕方ないにしても。
深見って師匠は彼の中に何を見出してたんかもっと深掘りしてほしかったかな。
映画の最後に登場する自信に満ちた芸能界のタモリ・たけし・さんまBIG3 とまで謳われた、たけしは(タモリさんまは出てませんので)、かつての内気で自堕落なガキとは全く関係がなく、このような変化がもっともらしく起こったことに納得いく説明がほしかった。  
まぁ、劇団ひとりが世界に向けてではなく、日本人のみに向けての作品なら大いに成功した作品なんやろなぁと落ち着きはするが。
深見の天才的な芸の才能と、たけしの多岐にわたる成功についての理解をさらに深めてたら、海外の視聴者にも日本人の人情味や、芸のこだわり、粋さをつたえれたんやろと思うと残念かな。
今作品は、日本が1960年代から一般化しはじめてきたテレビ媒体が日本の劇場を徐々に支配していく様子を描いてる点ではとても良かったかな。
また、柳楽の演技には脱帽の域をこえて素晴らしかった。
冒頭の特殊メイクした彼を誰か気がつかなかった。
ビートたけしではないとはわかるが、物真似師が演じてるのかと思うほど、たけしの特徴を演じてた。
加え、あまり好きじゃない大泉の方も雰囲気抜群の魅力的な演技をしていて映画を盛り上げてたかな。
兎に角、日本人向けのみの感想ならめちゃめちゃ良かったですが、海外の友達に胸を張ってオススメする作品かと問われたら否ですね。
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