紅孔雀

ウクライナ・クライシスの紅孔雀のレビュー・感想・評価

ウクライナ・クライシス(2019年製作の映画)
3.0
本作が扱うのは、2014年のクリミア危機。クリミア半島の帰属を巡ってロシアと親露派ウクライナ軍とウクライナ政府との三つ巴の紛争を描きます。先日レビューした『ウィンター・オン・ファイヤー』で扱われた親露派政権崩壊直後の出来事のようです。なおその始まりは、ウクライナ軍を装ったロシア兵が、ロシア側にミサイルを打ち込んだことにして戦端が開かれたとも言われています。つまり、現在でも使われたロシア(=プーチン)の卑劣な手法が、既に当時も使われていたということです。
映画は、敵味方がよく分からずにもうひとつ消化不良の感がありましたが、その訳のわからなさが市街戦のリアルかと思い至ると、説得力があります。
ロシア側の視点でも描かれているのが特徴で、その公平な視点は、連日の報道ですっかりウクライナ贔屓になっている私たちも西側のプロパガンダに毒されているのでは、という反省も促します。
“戦争の真実を語れるのは最後まで見届けた死者のみ”という(確か)作家レマルクの言葉が、心に重くのしかかります。そしてエンディングで流される夥しい戦死者の写真には、ただただ圧倒されました。
現在のマリウポリの惨状を前にして、この根深い怨念の連鎖が収束に向かうのか、些か絶望的な気持ちにもなりました。
紅孔雀

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