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クライマーズ・ハイのkaneのレビュー・感想・評価

クライマーズ・ハイ(2008年製作の映画)
1.9
原作という解説書を片手に観るべき作品。僕は原作未読なためなんのこっちゃわからなかった。

前半の緊迫感、焦燥感は見事であり、とても惹きつけられたが、決して物語が魅力的だったわけではない。
まず場面の状況や登場人物の関係性が明らかに説明不足。監督は原作に忠実に作ったのかもしれないが、人物の行動だけを抜き出して目いっぱい詰め込もうとしたため、人物の描写が疎かになっている。原作の可視化できない部分を映像で表現せずして、原作に忠実とは呼べない。それに加え、役者がやたら早口だったり、シーンやカットが目まぐるしく変わるため、状況を掴みづらい。その結果、テンポが良くなり、緊迫感が生まれるという皮肉なことになっている。しかし、随所に挿入される登山シーンがそれを破壊している。

また、焦点を当てる必要のない人物たちに、いい役を割り振ろうとしているが、その数があまりにも多く、全てが中途半端だ。人間関係も説明を欠いているので、それぞれがどういう思惑でどういう行動をしているのかが見えてこない。社内の確執が本作において肝になるのだが、人物の心情がほとんど描かれていないため、その確執の根幹にあるものに迫れていない。登場人物たちが衝突しているのを見て、何らかの確執があるのだと遡って予測する必要がある。
だが、何らかの確執は、何らかの確執のまま、今ひとつ理解できない内に映画が終わってしまった。

演出で大失敗しているので、物語もクソもない。
役者の演技が素晴らしいのでなんとか体裁を保ててはいるが、それだけで2時間25分は中々耐え難かった。
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