このレビューはネタバレを含みます
ようやく観ることができました、映画「クライマーズ・ハイ」。
原作は横山秀夫の同名の小説です。
原作に感動して映画を見に行って、がっかりさせられることは多々ありましたが、本作は小説に負けない、十分見ごたえのある映画でした。
映画化が決まったときに、原作者の横山秀夫が、監督の原田眞人に「君は『クライマーズ・ハイ』がやりたいのか、『日航機事故』がやりたいのか、どちらなんだ?」と尋ねたという話を耳にしたことがありますが、この映画は、まさに『クライマーズ・ハイ』でした。
ここから、ちょいネタばれ。
もちろん、原作と異なる部分はあります。
安西の息子と悠木の娘との結婚話や、昔、悠木の部下だった新人記者が事故で死んでしまったこと、そしてその新人記者の従姉妹から送られてきた「人の命は平等でない」という読者投稿のエピソードは、映画では触れられていませんでした。
特に最後のエピソードについては、小説の中では、悠木が事故原因に関するスクープを記事にしないと決断する一方で、読者投稿は掲載に踏み切るといった形で対比して描かれていたこともあり、原作の重要な柱の一つだと思っていたので、少しだけ残念です。
(個人的にも「人の命は平等でない」というメッセージには考えさせられるものがありました。)
ただし、内容の濃い小説を映像化するときには、あれやこれやとあまり詰め込み過ぎないほうが良いのかもしれません。それらのエピソードがなくても、映画のストーリー的には、別に違和感はありませんでしたし。
それから、映画と小説の違いをもう一つ感じた場面。それは、事故の遺族が北関東新聞社に新聞をもらいに来るシーンです。もちろん映画にも、その場面は出てくるのですが、小説を読んだときほどの感動はありませんでした。小説では「事故で夫を亡くし、憔悴しきった妻を、幼い子供が励ます」情景が描かれているのですが、映像でそこまで表現することは、やはり難しいのでしょう。
もっとも、小説と映画を比べることは、所詮ナンセンス。
映画として、素晴らしい出来映えだったことに間違いはありません。
2時間を超える大作ですが、一度も腕時計や館内の時刻表示に目が行きませんでしたから。
何度も読んだ原作ですが、もう一度読み返してみようという気持ちになりました。