TOMJFK

クライマーズ・ハイのTOMJFKのネタバレレビュー・内容・結末

クライマーズ・ハイ(2008年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

あの事故全体を捉えきれていない

史上最悪のあの航空機事故から23年。
非常にエキサイティングな予告編を観て「これは絶対観に行かなくては!」と思い、劇場に行きました。
感想を一言で言えば、「あの事故全体を捉えきれていない」というものです。
このような歴史上の大事件や大事故の映画化は、勿論たいへんな決意と熱意で完成されてゆくと思いますが、例えばディカプリオ主演ジェームスキャメロン監督「タイタニック」では・・・
架空の若いカップルの恋愛関係をメインテーマにしながらも、史上最大の海難事故についても、しっかりと描かれていました。
だから「タイタニック」は観終わった時に「タイタニックを描き切ったな」という完了感(?)、納得感がありました。
またケネディ暗殺を描いたオリバーストーン監督「JFK」でも同様の完了感がありました。

520名が死亡した23年前のあのJAL機墜落事故は、未だに私たちの記憶に大きなショックを残した出来事であり、例え、新聞社とその関係者にスポットを当てた作り方をするにしても、この事故全体を「描き切っていた」とはとても言えないと思います。
これは現場の状況をもっとCGを使って再現すべきといった意味ではありません。
佐山記者が事故現場初日に見た光景を「少女を抱えた自衛隊員が仁王立ちしていた・・・」と始まる文章で表現してゆく場面は、観ていて自然に涙が出ました。
また最後に乗客が書いた「遺書」が読まれる場面も、観ていて涙が溢れました。
これらはあの御巣鷹山での出来事の事実の一端であり、それだけで涙無くして私たちはこの出来事と直面できないのです。
それでは、それ以外の映画の場面で、どれだけ、この映画が私たちの魂を揺さぶったか?疑問です。
確かに最初から新聞社内・社員をせわしなく写すカメラショットは、緊迫感を生んだかもしれませんが、同様の手法であった上記「JFK」では効果的演出でしたが、本作品では意味を見出せません。
ただこれだけの題材を取り上げた映画に出演したキャストには迫力・気迫を感じました。
特に堺雅人の演技は特筆できる素晴らしいものでした。
また堤真一は「金もうけでなく、真の『仕事』に全力で取り組む男の魅力」に溢れていました。
それだけに、これだけの題材をテーマにした映画としては「描ききれていない」という物足りなさが残念です。
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