2020/12/09(水) オンライン試写で鑑賞。
1990年10月、かつてソ連でハリウッドやヨーロッパ映画の吹き替えで活躍した、初老の声優夫婦である夫のヴィクトルとその妻ラヤ。二人は新天地を求めイスラエルへ移民をした。ところがイスラエルには映画の吹き替えの仕事はなく、ラヤは旦那に秘密でテレフォンセックスの仕事を始めた。片やヴィクトルは海賊版レンタルビデオの吹替の仕事を始めたのであった。徐々にすれ違いだすヴィクトルとラヤに起きる出来事とは・・・
若い夫婦ではなく初老夫婦を描いたという事で、一歩間違えたら熟年離婚になるのでは…と少しハラハラしながら観られました。
ヴィクトルはかつてダスティン・ホフマンの吹替をしていたくらいの力量があり、本人にもそのプライドが残っている。なので多少の罪悪感はありながらも海賊版レンタルビデオでの吹替をするという所にいじましいものを感じてしまった(さらには思い切り映画館で“映画泥棒”をやるという笑)。
そんなヴィクトルの妻・ラヤは「そんな違法行為はしたくない」と拒み、旦那には秘密裡にマルゲリータと名乗って夜な夜なテレフォンセックスで日銭を稼ぐという逞しさ。こういった時ってやっぱり女の人が強いんだろうなー、と。あと声優だけあって声色をコロコロと変えて操るのが笑えます。
そしてラヤの行いがついにバレる日が来るのだが、、、というのが途中までの大まかな流れ。ヴィクトルがラヤの真の仕事を知るシーンはめちゃ笑えますのでご注目。
原題は『Golden Voices』ですが、邦題の『声優夫婦の甘くない生活』っていうのが良い感じにハマっております。悲劇のような喜劇。でも全く甘くないわけではなく、ビタースイート。
ヴィクトルはラヤの声に惚れこんで結婚をしたものの、自分の仕事一筋に生きてきたようで、本当にラヤの事が好きなのかいまいちハッキリしません。
象徴的なシーンが音楽の流れるレストランでラヤが「ダンスしましょうよ」と誘うけど頑なに拒むヴィクトル。このあたり、踊ってやれよ!奥さんの相手してあげなよ!!とハラハラしたシーンの一つでした。
ストーリーとしては夫婦にフォーカスしておりますが、サダム・フセインやミサイル、毒ガスといったイスラエルを取りまく歴史背景も随所に描写されており、当時の情勢を観終わってから調べてみるのも映画の楽しみのひとつかもです。
あとはフェリーニの『8 1/2』や、当時のヒット作である『ロボコップ』『ダイハード2』『ホームアローン』といった映画のワードが出てくるのもニヤリとさせられましたね。映画愛溢れる作りでもありました(映画泥棒はダメだけど…)。
声優夫婦は果たしてどのような結末を迎えるのか。クスっと笑えてウルっとできる面白い映画でした。
[2020-180]