シンプルな映画。舞台のシンプルさだけでなく、物語も寓意的な部分やメッセージ性も含めて素朴で、笑って泣いて戦ってのスペクタクルを期待すると物足りないかもしれません。
一方でこのスケール感だからこそ、イタリアの港町になぜか郷愁を覚える面白い感覚を味わうことができたような気もします。
イタリアのひと夏の出来事を瑞々しくノスタルジーたっぷりに描いたという点で『君の名前で僕を呼んで』を思い出しました。ブロマンス的な要素がテーマとなっているのも類似しています。
ギラギラとした日差し、まとわりつく汗、光る海。やはりこちらも夏の描写がどこか懐かしさを漂わせている作品でした。
終盤が駆け足にも見えましたが、ラストはこれまたイタリアが舞台のフェリー二作『青春群像』の終盤を想起させる子ども時代との訣別の甘酸っぱさが描かれ、胸がキュッと締め付けられました。