社会のダストダス

無聲 The Silent Forestの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

無聲 The Silent Forest(2020年製作の映画)
3.9
“校長、手話は出来ますか?”

過去に台湾で起きた衝撃事件、人物名などは変えられているけど残念ながら実話らしい。

韓国映画とかなら我慢したあと最後に、逆転リベンジでアッパーキメてある程度スッキリ終わりそうなものだけど、最初から最後までボディブローとローキックだけで組み立てたような展開で、なかなかメンタルに堪える。

基となった事件は2011年に台湾南部の聾学校で告発された少なくとも127件になる性暴力事件とその隠蔽で、そういえば日本でも報道があったかな。

聾者と聾者のあいだで行なわれ、学校側も事実を隠蔽。被害者がなかなか名乗り出なかったのも、「ほかの学校に行くよりはマシ」と同じコミュニティで孤立することの恐怖や健常者と同じ学校で生活していくことの不安もあり、加害者視点の事件が起こるまでの背景も含め闇深い。

主演のチェン・イェンフェイは先にNetflixの『Wave Makers』で普通に喋ってる役を観たことがあったので、本作が役作りで喋れないことは知っていた。手話の演技の善し悪しは分からないけど、本作だけを観ていたら本当に聾者の人が演じていると思ったかもしれない。

ひたすら沼に沈んでくような映画だったけど、観て良かったと思う。ちょっと調べるのも怖いけど、その後救いはあったのかな。欧米にも同じような題材の作品はあるけど、アジア作品だと陰湿さが独特なものになるとよく思う。

映画としては高得点にしたいけど、内容としては二度度観たくないという意味で、スコアが難しい。