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ニューオーダーのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

ニューオーダー(2020年製作の映画)
3.5
ミシェル・フランコ監督によるベネチア国際映画祭銀獅子賞(審査員大賞)受賞作。
メキシコを舞台に、殺戮、略奪、暴力が支配する救いのない無秩序な世界を描く。
原題Nuevo Orden  (2020)

裕福な家庭に育ったマリアンの結婚を祝うため、政財界の名士たちが豪邸に集う。
そこに、マリアン宅でかつて働いていた使用人のロランドが病気の妻エリサの手術のためお金の無心にやってくるが、お金の工面ができなかったマリアンは、エリサを病院まで連れて行こうと使用人クリスチャンを伴って車で家を抜けだす。
そんななか、マリアン宅の周辺では、貧富の格差に抗議する非白人のデモ参加者が暴徒化。やがてマリアンの家にも暴徒が押し寄せ、家の使用人までもが加わり、華やかな宴は一転、殺戮と略奪の地獄絵図へと変容する。
やがて、軍隊が街を制圧。戒厳令が敷かれ、夜間外出禁止令が出されて、道路封鎖や労働制限がなされる。
ところが、軍の中の犯罪者集団が暴動につけ込んでマリアンら多くの白人を誘拐監禁、肉体的暴行、性的暴行を加え、家族に身代金を要求する…。

~登場人物~
①新婦の家族
・新婦マリアン(ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド)
・母レベッカ(リサ・オーウェン)
・父イバン(ロベルト・メリナ)
・兄ダニエル(ディエゴ・ボネータ)
・兄の妻(フアナ・アリアス)、妊婦
・姉(クラウディア・シュミット)

②新郎の家族
・新郎アラン(ダリオ・ヤズベック・ベルナル)
・母(パトリシア・ベルナル)

③豪邸の使用人
・元使用人夫婦、夫ロランド(エリヒオ・メレンデス)と心臓手術が必要な妻エリサ
・マルタ(モニカ・デル・カルメン)と息子クリスチャン(フェルナンド・クアウトレ):家族への身代金要求の伝達役にされる。

④暴徒化する豪邸の使用人
・フェリペ(レオナルド・アロンソ):殺戮に加わる。
・使用人の女性:暴動に加わり、家の宝石類を奪う。

⑤その他
・政府の有力者ビクトル(エンリケ・シンガー)
・将軍(グスタボ・サンチェス・パラ)

"人種間の社会的経済格差"と"非白人による暴動"
"軍人による犯罪行為"と"軍事政権による隠蔽工作"

ラスト、軍隊による好戦的な演奏が流れ、冒頭の絵画はオマール・ロドリゲス・グラハムによる「死者だけが戦争を見た」だとクレジットされた後、無音状態が最後まで続く。

人助けをしようとしたマリアンの善意の行き着く先は?
観客は過酷で理不尽な世界を見せられるが、残酷場面について刺激を煽るような過度な映像表現はしていない。
この映画で描かれていることは(多かれ少なかれ)実際に世界で起こっていることで、現代社会へ警告になっている。
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